ただ、ひとつ気になる点がある。同教習所公式サイトの「よくあるご質問」コーナーで、「男性はMT免許を取ったほうがいいのか?」という質問に対し、「意見が分かれるところですが、男の人はMTで免許を取ったほうがいいかと思います。まず、MTはATより上位免許です。男性は将来、仕事・その他でMT車を運転しなくてはいけない場面があるかもしれません」と記載されている。
確かに、職種によってはMTの商用車を採用しており、AT限定免許では仕事が務まらないケースもあるだろう。特にトラックやバスなどはMT車のほうがAT車よりも価格が安いということもあり、また燃費も抑えられるため重宝される傾向がある。
AT限定免許の取得者が、あとからMT免許に変更する場合、「AT限定解除」の教習を受けなければならない。前出の自動車学校のケースでは、最短4時限の教習で、費用は約6万円かかる。はじめからMT免許を取得する場合に比べて割高になってしまう。約4割の人々が今でもMT免許を選択しているのには、長期的な可能性を視野に入れているという意味合いがありそうだ。
若者のクルマ離れで免許取得者も減少か
将来的にも絶対にMT車に乗ることはないと断言できるのであれば、AT限定免許を取得したほうが労力も費用もかからないのは事実。かつては、「MTを運転できない男性は格好悪い」といった風潮もあったが、今やそのようなイメージは薄れてきたのではないだろうか。
そもそも、昨今は若者の車離れが叫ばれて久しい。「運転免許統計」によると、16年末の運転免許保有者数は、40~44歳の年代層が全体の11.1%、45~49歳が10.8%を占めており、この年代がボリュームゾーンとなっている。一方、20~24歳の運転免許保有者数は全体の5.8%、25~29歳が6.9%で、年々減少傾向にあるのだ。
また、ソニー損保が1000人を対象に実施した「2018年 新成人のカーライフ意識調査」では、今年の新成人の運転免許保有率は56%。運転免許を取れる年齢になったからといって、誰もがすぐに教習所通いを始めているわけではないようだ。ちなみに、56%の内訳はMTが22.7%、AT限定が33.3%と、ここでもAT限定が数で上回っている。
もっとも、都市部と地方では事情も変わってくるだろうが、今後は自動車の運転に消極的な若年層がますます増えていく可能性もある。そんな彼らが「ペーパードライバーになったとしても、とりあえず運転免許は持っておこう」と思い立ったとき、取得の難易度や料金が低いAT限定に傾くのは自然なことなのかもしれない。
(文=A4studio)