昨年9月、連邦破産法第11条(通称チャプターイレブン:日本の民事再生法に相当)の適用を申請した米玩具販売大手トイザラスは、米国での事業継続を断念した。経営陣は米国のすべての事業を売却する考えを表明している。これを受けて、3万3000人の雇用に影響が出る見通しだ。なお、日本国内で事業を展開する日本トイザらスの経営は独立しており、事業の継続に影響はないとみられる。
米トイザラスの経営悪化は、すでに市場関係者の間では認識されてきた問題だった。2005年、同社はプライベート・エクイティ・ファンドに買収され、経営再建に取り組んできたからだ。同社にとって想定外だったのは、アマゾンの躍進によってオンラインでのショッピングが急増し、店舗での玩具消費が大きく落ち込んだことだ。その結果、財務内容の立て直しが思うように進まなかった。同時に、トイザラスは新しい分野への進出を進めて需要を生み出すことが、できなかった。
今後、さらに小売業界を中心にネット企業との競争は激しさを増すだろう。小売業界が生き残っていくためには、モノを売ることだけでなく、これまでの経験やノウハウを生かして新しい収益源=需要を生み出していくことが求められる。それは、投資ファンドによる経営再建の手法ではなく、企業自らの知見に依存するところが大きいと考えられる。
トイザラスをのみこんだ強敵アマゾン
3月15日、トイザラスは、米国とプエルトリコ自治連邦区での事業を閉鎖(清算)すると発表した。同社は事業の売却を進める意向を示している。過去10数年間に及ぶ経営再建がうまくいかなかったことを踏まえると、売却先が短期間で見つかるとは考えづらい。特に、米国ではFRB(連邦準備制度理事会)が段階的な利上げを重視している。金利が上昇していく可能性があるなかで、借り入れを通して経営を続け、事業基盤を強化しようとしてきたトイザラスの再生に商機を見いだすのは難しいだろう。
債務依存度の高い財務面での問題に加え、足許の競争環境も事業の再生を難しくする要因だ。トイザラスの再建が難しくなった最大の原因は、客足が遠のいたからだ。端的に言えば、トイザラスの顧客を、アマゾンがのみ込んだのである。
昨年のクリスマス商戦ではアマゾン経由の販売が増加し、カード決済や宅配貨物の取扱量が増えた。その分、トイザラスは顧客からの支持を失ったといえる。特に昨年はトランプ政権による減税の成立などを受けて、消費への追い風が強まりやすかった。アマゾンがクリスマス商戦でのシェアを高めたことは、トイザラスの経営陣にとって経営の再建を断念する決定打となった可能性がある。