「マイクロプラスチックから検出されたこれらの有害化学物質の濃度は環境(海水)中の濃度の数万~百万倍の濃度に達するものもあり、吸着することで高濃度に濃縮されることもわかってきた」(16年5月「化学物質と環境」No.137)
このように海洋中にあるPCBなどの有害物質を吸着濃縮したマイクロプラスチックが、食物連鎖で私たちの体内に取り込まれ蓄積されることになる。
もう一つの問題は、水産資源に対する影響である。前出・高田教授は、マイクロプラスチックが水棲生物の生殖能力に影響を与えていることを明らかにしている。
「マイクロプラスチックについては、ポリエチレン微粒子の曝露により牡蠣の再生産能力の低下、淡水魚の卵の孵化率の低下、ワムシの抗酸化酵素の誘導などが報告されている」(「化学経済」<17年1月号>『マイクロプラスチック21世紀の環境問題(上)』より)
さらにベルギーゲント大学のコリン・ジャンセン教授は、マイクロプラスチックを取り込んだプランクトンが死滅したことを明らかにした(18年3月22日放送『ひるおび』<TBS系>より)。将来的にマイクロプラスチックによってプランクトンが影響を受け、減少することになるのであれば、食物連鎖の上位に位置する魚類の資源が低下することになりかねず、人類の生存条件にも影響を与えかねない。
遅れる日本政府の対応
このような脅威に対して、世界的にも対策が始まっている。
・米国:15年11月、合衆国連邦法でマイクロビーズの化粧品への配合を禁止。
・フランス:16年9月、プラスチック容器での飲食の提供を20年から禁止する法案が成立。16年10月、マイクロビーズを含む化粧品などの販売を18年1月から禁止する法案が成立。
・イギリス:18年1月、マイクロビーズを含む製品の生産禁止を発表。同年6月、それを含む製品の販売を禁止。
・台湾政府:16年8月、マイクロビーズ入りのパーソナルケア製品の輸入・生産を18年7月から禁止し、20年には販売を全面的に禁止。
これに対して、日本では16年3月に日本化粧品工業連合会が「洗い流しのスクラブ製品におけるマイクロプラスチックビーズの使用中止に向け、速やかに対応を図られること」とする文書を会員企業に出し、一部会員企業の取り組みが始まっているが、日本政府はまったく法規制に向けた動きを見せていない。研究者からも「プラスチック対策としても、日本は世界に取り残されている」との批判も出ている。
規制改革推進に積極的な安倍首相の下では、マイクロプラスチックの法規制など望むべくもないのであろうか。
(文=小倉正行/フリーライター)