今、海洋のマイクロプラスチック汚染の問題が、世界的に危機として受け止められ、各国政府がその対策に乗り出している。
マイクロプラスチックは微小なプラスチック粒子で、直径が約0.1ミリメートル以上、5ミリメートル以下。発生の仕方で2種類に分けられている。一つは、海洋に流出したプラスチック製品が紫外線や波や熱によって細分化したもの。これには、合成繊維の衣類を洗濯した時に発生するポリエステルやアクリルの繊維も含まれる。もう一つは、プラスチック製品をつくる過程の中間材料であるレジンペレットと、洗顔料や化粧品などに含まれているマイクロビーズ(ともに5ミリメートル以下)である。
現在、毎年800万トンものプラスチックが海洋に流出しており、2050年までにはその量は魚の量を上回ると指摘されている(16年ダボス会議報告)。マイクロプラスチックによる海洋汚染は、予想以上に広がっている。磯辺篤彦・九州大学教授の調査(15年10月29日放送『NHKクローズアップ現代』)では、200トンの海水からマイクロプラスチックがおよそ1300個確認できたとされ、東アジア海域では1平方キロメートル当たり172万個におよんでいる。
高田秀重・東京農工大学教授の16年の調査報告では、東京湾のイワシ64匹中49匹から平均3個発見された。14年の環境省の調査では、日本周辺海域の量は他の海域の10倍以上であることが判明している。アメリカ5大湖では1平方キロメートル当たり約60万粒が確認されている。
また、東京海洋大学の報告では、南極海でもその浮遊が、北太平洋の平均的な浮遊密度と同じ水準であることが確認されている。さらに、今年3月のニューヨーク州立大学の報告では、世界9カ国のボトル入り飲料の93%からマイクロプラスチックと思われるプラスチック粒子の混入が確認されている。このように汚染は広範囲に及んでおり、私たちの食生活にも侵入している。
食物連鎖で人の体内に蓄積
マイクロプラスチックが人類にとって脅威となる理由は2つある。
一つは、それがプラスチック自体の可塑剤や酸化防止剤、難燃剤などの有害化学物質を含有しているだけでなく、カネミ油症事件の原因物質であったPCBなどの残留性有機汚染物質を表面に吸着する性質があることである。兼廣春之・東京海洋大学名誉教授は、マイクロプラスチックが有害化学物質の吸着濃縮をすると指摘している。