「お荷物扱い」同士の提携
日野は1991年に商用車として初のハイブリッド車(HV)を商品化、累計販売台数は1万5000台に達している。しかし、商用車も大きな潮流は電気自動車(EV)だ。商用車世界トップのダイムラーグループである三菱ふそうトラック・バスは、2017年に小型EVトラック「eキャンター」を開発した。20年には次世代電動車両の量産も計画する。日野はトヨタグループと歩調を合わせてHVに力を入れてきたこともあって、EVでは出遅れている。トヨタやマツダ、デンソーなどが設立したトヨタグループのEV基盤技術開発会社に、日野は技術者を派遣している。しかし、乗用車とは異なる重量の重いトラックやバスの電動化技術に比重が置かれるはずもなく、日野としては期待できない。
自動運転についても同様だ。多くの人命をあずかるバスと乗用車では、自動運転技術が異なる。トラックの隊列走行についても自社で手がけるしか手段がない。これに対してダイムラーは、欧州の一部地域で自動運転バスや隊列走行の公道走行を実施するなど先行している。
「物流や輸送が大きな変革期を迎えるなか、日野はVWトラックと協業関係を築いていく」(下社長)
一方、VWグループが日野と提携するのには別の焦りがある。乗用車を含めると世界トップシェアだが、スカニア、MANを含めたグループの商用車世界シェアは9位と冴えない。販売がほぼ欧州に偏っているためだ。商用車市場のシェアトップはダイムラーだが、2位以下の多くは中国系の商用車メーカーが占めており、VWトラックとしてはアジア攻略が大きな課題だ。販売全体の7割がアジア地域の日野と組むことは、VWのアジア戦略のてこ入れにつながる可能性がある。
世界的に拡大している商用車市場でシェアが低いのは、日野も同じ。世界シェアトップクラスの親会社から見れば「お荷物扱い」されている日野とVWトラックが手を組むことで、先進的な技術開発を強化し、ダイムラーや新興商用車メーカーに対抗していく構えだ。