楽天は、携帯電話事業への参入が条件付きで認められた。同社が最終的に目指すのは、アマゾンを上回るビジネスネットワークをつくり、オンラインを中心に経済活動のプラットフォーム(基盤)を提供することだ。楽天・三木谷浩史社長の経営姿勢には、成長を追い求める野心=アニマルスピリットが感じられる。それは、企業の成長には欠かせない要素だ。
しかし、国内の株式市場では、そうした楽天への評価が必ずしも芳しくない。2015年以降、楽天の株価は下落トレンドをたどっている。特に、年初来の株価下落は大きい。その理由は、投資のコストがかさみ、財務内容が悪化するとの懸念が高まっているからだ。携帯電話でんわ事業への参入に関しても、成長に寄与するという期待ではなく、財務内容を悪化させる懸念材料として受け止めるアナリストが多い。端的に言えば、携帯電話事業で成長を目指すのは無理、困難との見方が多い。
問題の一つは、同社の将来像に関するイメージがつかみづらいことだろう。これまで楽天は、成長できると考えられる分野に、矢継ぎ早に資金をつぎ込んできた。たとえば、フリマアプリの「メルカリ」が社会に浸透するとともに、楽天も同様のサービスである「ラクマ」を開始した。スポーツ、金融、EC(電子商取引)、それに加えてビックカメラなどとの提携など、成長が見込めると判断されるのであればなんにでも手を出すのが楽天流に見えてしまう。何を収益の柱とするか、シンプルかつ持続性あるビジネスモデルの提示が求められている。
第2のアマゾンを目指す楽天の経営
1997年2月に設立された楽天(設立時の法人名は株式会社エム・ディー・エム)は、インターネットを通して誰でも自由に買い物を行うことができる社会を目指してビジネスを展開してきた。同社のビジネスモデルのベースにある発想は、あくまでも、ICT(情報通信テクノロジー)を用いて既存の生活、経済活動に新しい価値を提供することだ。それが、楽天がアマゾンを追いかけているといわれるゆえんである。
ただ、今日の楽天の事業ポートフォリオは、ネットからスポーツビジネスまで、多岐にわたる。複雑化してわかりづらいともいえる。近年は、IT関連の投資や買収によってインターネット事業の収益の変動が大きくなっている。それを、証券ビジネスを中心に成長してきた金融事業の収益が補い、楽天全体の経営を下支えしているとも考えられる。このまま拡大路線を進むと、楽天は成長が見込めるものにはなんにでも手を出す、リスクの高い企業との印象が強くなりかねない。