また、人口減少や都心回帰が進んだことにより特に地方経済が低迷し、郊外や地方を中心に成長してきたヤマダ電機はそのダメージをもろに受ける格好となり、売り上げの減少に歯止めがかからなくなった。
そうしたなか、手薄だった都市部やターミナル駅周辺への出店を強めていくも、ノウハウが欠如していたほか、ヨドバシカメラやビックカメラといった先行企業が立ちはだかったことにより、期待したような売り上げの増加を実現することができなかった。さらに、都市部進出はコスト増を招き、利益を圧迫するようになっていった。
そこで、不採算店の閉鎖を進め、強引な値引きをやめるなど利益重視路線へ舵を切って収益性を高める施策を講じたが、複数の自殺者を出すほど従業員を酷使するといった過去のコスト削減策を上回るような手を打ち出せていないこともあり、現状は目立った成果を出せずコスト高が続いている。
特に、売上高の6割を占める家電販売事業の苦戦が鮮明となっている。18年3月期の売上高は前年比2.8%減の1兆1109億円、売上総利益は8.8%減の2729億円だった。
家電小売市場は縮小傾向にある。調査会社のGfKジャパンによると、17年の家電小売市場は前年比1%増の7兆700億円とわずかに増加したものの、それまでは減少傾向が続いていた。市場縮小や競争の激化により、ヤマダ電機の家電販売事業は厳しい状況に置かれている。
家電販売以外で苦戦している事業があるのも頭痛の種だ。11年に子会社化した住宅メーカー、ヤマダ・エスバイエルホーム(旧エス・バイ・エル)がそうだ。18年2月期決算は、営業損益が9.6億円の赤字(前期は6000万円の赤字)だった。また、住宅展示場の減損損失を計上したことなどから純損益が27.5億円の赤字(前期は2.9億円の赤字)に膨らんでいる。
エスバイエルの業績は低迷を続けている。ヤマダ電機の傘下に入った翌期の12年2月期以降、純損益で黒字を計上できたのはたった2期のみ。住宅と家電を丸ごと販売することを狙ってのエスバイエルの買収だったが、目論見通りに事が進んでいないのが実状だ。低価格路線に変更したことと、住宅に関するノウハウが足りていないことが低迷の主因だろう。
主力の家電だけでなく、新たに手がけた事業についても苦悩が続くヤマダ電機。従来とは異なる分野に手を出しているため、その分野におけるノウハウの蓄積が必要といえるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。