4月11日、ネット通販(EC)大手の楽天と家電量販店大手のビックカメラは、楽天が運営する仮想モール「楽天市場」内に家電通販サイト「楽天ビック」を開設した。
以前から楽天市場内にあった「ビックカメラ楽天市場店」を刷新したかたちとなっており、ビックカメラの通販サイトとほぼ同数の約60万商品を取り扱っている。ビックカメラの持つ配送網やアフターサービスを活かすことで、15時までの注文商品を同日内に届ける当日配送や、購入時に商品の組み立て・設置工事をスムーズに依頼できるサービスが特徴。さらに、楽天ビック内で購入した商品をビックカメラの実店舗で受け取ることや、店頭在庫をサイト上で確認して、実店舗で取り置きできるサービスもあるという。
その開設の背景には、約7兆円にも上る国内家電市場において、EC化率は29.9%と伸び悩んでいることがある。楽天の調査によると、ネットでの家電購入を断念した理由として、「実際に見て購入したい」「配送設置が不安」などが上位にあったため、これらの課題を払拭するサービスを行うことで、家電ECの売り上げを伸ばしていこうという狙いだ。
ECサイト運営を中心としながら金融ビジネスなど幅広い事業を手掛け、最近では国内第4のキャリアとして携帯電話事業へ参入表明している楽天だが、やはり無視できないのは世界最大級のEC企業であり、日本国内でも広く利用されているアマゾンの存在だろう。目の上のタンコブともいえるアマゾンに対し、楽天はどのような戦略で対抗していくのだろうか。
『アマゾンと物流大戦争』(NHK出版新書)の著者であり、通販専門物流代行会社「イー・ロジット」で代表取締役社長兼チーフコンサルタントを務める角井亮一氏に話を聞いた。
提携で楽天経済圏を広げ、“ライフタイムバリュー”を掌握したい楽天
楽天がアマゾンと戦うための戦略とは一体どういったものだろうか、角井氏はこう分析する。
「まず、アマゾンは創業して以来20年以上、一貫して積み上げてきたロジスティックのノウハウがありますから、簡単に負かせる相手ではありません。昔は世界最大のEC展示会に行くと『アマゾンをどうやって倒すか』という話がよくされていましたが、現在だとほとんどの企業は『どうやってアマゾンを活用・共生していくか』という方向にシフトしているのが現状。今でも打倒アマゾンを掲げているのは日本だと楽天やヤフー、アメリカではウォルマートやイーベイといった超大手や、業界内ナンバーワンクラスの企業くらいのものです。そのナンバーワンクラス企業といえど、アマゾンに取り込まれていることもあるので、アマゾンはますます強くなっていっているわけです。かつての楽天は30代女性の顧客層という強みを持っていたのですが、今はほとんどの人にアマゾンで買い物をする習慣があり、逆に楽天で買い物をする人はどんどん少なくなってきている。やはり楽天にとってアマゾンの存在は脅威です。