総事業費は1430億円。東武が予測した年間の来場者数は3200万人で、東京ディズニーリゾートの年間来場者数2500万人を上回る数字だ。開業から6日間(22-27日)で早くも来場者数が100万人の大台を突破。142万4000人に達した。ツリーの年間の経済効果は1700億円とはじき出された。経済メディアは、初年度のスカイツリーの上乗せ効果は、売上高で360億円、営業利益で100億円程度と試算した。
前景気にあおられて、株式市場はツリー効果に大いに期待したが、まったくの空振りに終わった。株価は年初来高値から同安値まで、時価総額にして892億円が消えた勘定だ。東武自身が「息の長いビジネス」と言う通り、スカイツリーは短期的に大きな収益をもたらすわけではない。
ところで、ツリー開業の22日、欧米系の格付け会社、フィッチ・レーティングスは、日本国債を一段階引き下げ、「シングルAプラス」とした。約9年半ぶりの引き下げで、スロバキア、エストニアと同水準となった。株式市場ではスカイツリーより、こちらの負のインパクトの方が格段に大きかったようだ。超高層ビルが建設されるとバブルが崩壊するという、”都市伝説”が現実味を帯びてきたと解釈されたからだ。
過去20年間、日本はGDP(国内総生産)が減り、株価はピークから8割下げた。そんな中で、唯一、価値を失わなかったものが日本国債である。長期金利は低下(国債の価格は逆に上昇)を続け、日本国債は最も運用成績(パフォーマンス)の良い金融資産だと、高い評価を得た。円独歩高→日本国債バブルである。歴史が証明していることだが、土地バブル、株バブルが崩落したように、バブルは必ず雲散霧消するものなのだ。
フィッチの格下げを受けて、株価は低迷。日経平均は5月23日の大引けで172円安の8556円。再び安値圏に接近し、TOPIXは年初来の安値を更新した。
野田政権の消費税引き上げ政策が頓挫すると、日本の財政赤字の肥大に歯止めがかからなくなる。その先には海外投資家、ハゲタカファンドの日本売り(日本株&国債の叩き売り)が待っているという最悪のシナリオだ。
超高層ビルの完成とバブルの崩壊の、奇妙なアノマリー(変則的事実)。デジャ・ヴュ(déjà-vu、既視感・錯覚)であってくれ、と祈るのみである。
(文=編集部)