パナソニックは「我慢」できるか…EVブーム終焉、テスラ・リスク、中国「ホワイトリスト」の存在
主役は、もはや家電だけではない。パナソニックが家電事業から車載事業へと軸足を大きくシフトさせたのは、2008年だ。
パナソニックは、家電事業で培った最先端デバイスを多数保有している。これまでデバイス事業部は、白物やテレビなど社内の完成品を扱う事業部と足並みをそろえて事業を展開してきたが、1990年以降の家電事業の衰退を受けて、デバイス事業もまた方向を見失い、低収益を余儀なくされた。当時、パナソニックの車載事業を担うオートモーティブシステムズ社社長だった津賀一宏氏は、デバイス事業の新しい収益源を求めて、家電から自動車への“転地”を決断した。
すなわち、各種センシングやデバイス、画像処理技術、リチウムイオン電池などを、車載用のカーナビゲーションやディスプレイなどの「快適」分野、ADAS(先進運転支援システム)などの「安全」分野、EV(電気自動車)などの「環境」分野に“転地”することを決めたのだ。
すでに「快適」分野と「安全」分野は順調に受注を拡大している。また、福井県「永平寺参ろーど」や京都府「けいはんな学研都市」で、自動運転によるEVコミュータの走行実証実験を進め、システムサプライヤーとしての存在感を高めている。
その一方で、課題となるのは「環境」分野の車載電池事業である。これまで、リチウムイオン電池はノートパソコンやスマートフォンなどの民生品に広く使われてきたが、それだけでは事業の成長が見込めないことから、産業用へとシフトした。
そのひとつが、EVメーカーのテスラとの協業だ。テスラの普及型EV「モデル3」の場合、約7000本の円筒型リチウムイオン電池が必要となる。これが、リチウムイオン電池の需要を一気に拡大するチャンスとなるはずだった。パナソニックは2017年1月、米ネバダ州にテスラと共同で大規模電池工場「ギガファクトリー」を立ち上げ、建設費用6000億円のうち約2000億円を負担した。
ところが、誤算があった。生産の遅れだ。テスラは当初、「モデル3」の生産台数を17年末までに週5000台に乗せるとしていた。パナソニックはテスラのこの生産目標に沿って車載電池の生産を進めてきたが、目論見は外れた。18年5月30日に開かれた投資家向け説明会の席上、パナソニック副社長でオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS)社長の伊藤好生氏は、「ボトルネックは直近では相当改善している」と前置きして、次のように説明した。
「車載電池のメインのお客さまのテスラとは密にコミュニケーションをとって、ステップ・バイ・ステップで着実に対応していきます」
車載用円筒型電池の販売の期ずれの発生から未達となった車載事業の18年度の売上高2兆円の目標については、18年度に見込んでいる車載電池の増販を受けて、19年度に達成することを明言した。
パナソニックは車載部門において18年度2410億円の設備投資を計画し、その多くを車載電池に振り向ける。投資先は「ギガファクトリー」に加えて、中国の大連工場、姫路工場だ。また、トヨタとも20年代前半までの実用化をめざす角型の次世代電池、全固体電池の共同開発を進めている。