コンビニ業界では依然としてセブンイレブンが独走状態だが、それに歯止めをかけるべく、ファミリーマートやローソンをはじめとする同業他社は、新商品を開発したり、サービスの拡充に努めたりしている。しかし、セブンの牙城は容易に崩せない。
一方、セブンはネット通販やドラッグストアといった新たな敵を迎えて、守勢に回っている。セブンの成長戦略にも鈍化が見え始めているが、新しい収益の柱として期待を込めているのがセブン銀行だ。
セブン銀行の特徴は、既存の銀行が収益の柱にしていた貸付業務をしない点にある。あくまでも預金や振込といったBtoC業務をメインにしている。2001年に銀行ビジネスに参入したセブン銀行のビジネスモデルには当初、冷ややかな視線が注がれていた。他行は貸付業務をしないセブン銀行を、単なる銀行の下請け的な位置づけで見ていた。そのため、他行がセブン銀行を敵対勢力と認識することはなかった。
しかし、いまやセブン銀行はセブン&アイグループの一角を占める一大事業にまで成長した。2018年2月期の決算では、セブン銀行をはじめとする金融関連事業で497億円もの営業利益をあげている。この数字は国内コンビニエンスストア事業の2452億円には遠く及ばないものの、グループの祖業でもあるスーパーストア事業の212億円を大きく上回っている。
このセブン銀行の成功は、他行も刺激。ミニストップはイオン銀行を設立して追随。ローソンも銀行設立を発表して、店舗内に自社グループのATM設置を急いでいる。
しかし、先行するセブン銀行は、もはやセブンやイトーヨーカドーといった自社グループ店舗外にもATMを設置するなど、営業ネットワークを拡大している。たとえば、東京ビッグサイトなどの大型公共施設内にはセブンが出店しているが、セブン銀行のATMは店舗外の通路にも設置されている。こうした店舗外ATMを増やすことで、セブン利用客以外でも気軽に使えるようにし、利用者の拡大を図ってきた。
そのほか、セブン銀行は市役所や中央省庁などのATMコーナーにも設置されるようになっている。セブンの店舗内には複数台のATMが設置されている場合もあるが、そうした大型公共施設や役所への進出によって、セブン銀行のATM設置台数はセブンの店舗数を上回っている。ある地方自治体関係者は、こう話す。