「コンビニは住民票や印鑑証明などの公的書類を発行できるようになり、また、電気・ガス・水道といった公共料金、住民税や健康保険といった各種税金、年金なども取り扱っています。他方、行政改革のあおりで職員を減らした役所では、それらの取り扱いは縮小傾向にあります。それを補っているのが、コンビニです。今般のコンビニは、すでに役所みたいなもので、役所側から見てもコンビニがなければ、行政の業務は回りません。完全に公共インフラ化しています」
地銀と対照的
コンビニの準公共機関化に伴い、セブン銀行の金融機関としての信用も高まった。そして、セブン銀行に追い風となったのがゼロ金利政策だ。超低金利時代に突入したことで、メガバンクをはじめ地銀は収益を急速に悪化させている。
メガバンクや地銀ではIT化を急ぎ、人員削減の嵐が吹き荒れている。特に高齢化が進み、産業も衰退している地方都市の地銀は経営が苦しい。地銀は経営合理化の下、支店を次々に閉鎖した。支店や出張所を廃止したことで、使い勝手は悪くなった。一方、コストカットと無縁のセブン銀行の主力はATM。しかも、セブン銀行のATMは、銀行のATMよりも人手を必要としないシステムになっている。
当然ながら無人のATMでも、現金補充をはじめメンテナンスなどで人手は必要になる。セブンのATMでは現金の補充はメンテナンスを請け負っている警備会社が担当するほか、店舗内にATMを設置する店のオーナーが売上金を預け入れる仕組みになっている。店の売上金を預けることで、現金を欠品する機会を減らす。
そうしたシステムにより、現金の補充といった作業でも徹底的な省力化が図られている。このシステムを構築したセブン銀行は、メガバンクや地銀のような人員削減に取り組む必要がない。
セブンが店舗を増やせば増やすほど、セブン銀行のネットワークも広がる。同時に利便性も向上する。こうした好循環で、セブン銀行は公共インフラ化した。
指定金融機関に?
地方自治体関係者の間からは「セブンを指定金融機関にしたほうがいいのでは?」などという声も囁かれ始めている。指定金融機関とは、地方自治体などの公金徴収や支払い事務などを扱う金融機関のことで、おおむね地元の銀行や信用金庫が指定されてきた。公金を取り扱うという性質上、信用性の高い銀行というお墨付きをもらえる。また、地元財界では盟主のように崇められる。そうしたこともあり、これまで銀行業界では地方自治体の指定金融機関になることは、経営上でも大きなメリットがあるとされていた。
しかし、いまや指定金融機関になっても恩恵は少ない。逆に面倒な事務が増えることもあり、指定金融機関になることに尻込みする地銀も出てきた。
地方の隅々まで店舗を展開しているセブン銀行が、地方自治体から信頼が寄せられることは自然な流れといえる。もはや地銀を超えたセブン銀行。このまま快進撃が続けば、セブン銀行がメガバンクを凌駕する金融機関になるのは時間の問題かもしれない。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)