東京医科大学が入試で女子受験生に対して一律減点を行い、合格率を調整していた事実が明るみに出たことで、女性医師の現状がクローズアップされている。メディアやインターネット上で、さまざまな議論があるなか、女性の合格率調整を「必要悪」と言い切る一部の論調には首をかしげたくなる。一連の報道で、医学生を病院経営の駒のひとつとしか見ていない大学病院の冷酷さも浮かび上がってきた。
実際のところ、女性医師の勤務状況はどうなっているのか。統計から探ってみよう。
厚生労働省の「平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査」(平成29年12月発表=2年に1度実施)によると、全国の医師数は31万9840人(平成28年12月31日現在、以下同)で、前回調査(平成26年)に比べ8275人、2.7%の増加だった。男性は25万1987人(総数の78.9%)、女性6万7493人(同21.1%)で、圧倒的に男性が多い。だが、前回からの増加率を見ると、男性の1.7%増に対し、女性は6.3%増と4倍近い。約32万人いる医師のうち、病院、診療所など医療施設の従事者が30万4759人と全体の95.4%を占めている。
女性医師の比率が高い診療科は「皮膚科」「乳腺外科」「麻酔科」「眼科」の順
「上から採っていたら女性ばかりになってしまう」
「眼科医と皮膚科医だらけになってしまう」
あるテレビ番組で、女性医師タレントがこう言って物議を醸した。このタレントは「外科医は少ない。やっぱり外科医になってくれるような男手が必要なんですよ」とも発言していた。
では、女性医師たちは、どんな分野で活躍しているのだろうか。厚労省調査をもう少し詳しく見てみよう。「医療施設従事医師数、主たる診療科、施設の種別、性別」というデータがある。診療科別の女性医師数の上位は次の通り(医療施設に従事する女性医師の総数は6万4305人)。
内科9990人、小児科5811人、眼科5028人、皮膚科4322人、産婦人科3884人。これを女性医師の比率で見ると、皮膚科47.5%、乳腺外科39.5%、麻酔科38.8%、眼科38.3%、産婦人科35.8%となる。絶対数では、最多の内科の比率は16.4%にすぎない。小児科は34.3%だ。
逆に、女性医師の少ない診療科はどこか。医師数では、気管食道外科2人(2.4%)、アレルギー科36人(22.2%)、肛門外科38人(8.6%)、感染症内科83人(16.9%)、美容外科111人(21.3%)となっている。6万4305人のうち、わずか2人しか従事していない気管食道外科のような診療科があるのだ。
比率でみると、気管食道外科2.4%、整形外科4.9%、脳神経外科5.5%、泌尿器科5.7%、外科5.8%の順だ。外科系の比率の低さが目立ち、心臓血管外科6.1%、消化器外科6.2%、呼吸器外科7.4%など10%未満が多い。
特定の診療科に女性医師の偏りが見られるのは間違いないが、だからといって「一律減点」による合格率調整を正当化するのは短絡的すぎる。