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神戸製鋼所は13年度から3カ年の中期経営計画を策定した。2年連続で経常赤字となっている鉄鋼事業について、設備投資や生産工程の効率化により、3年間で600億円の収益改善を目指す。自動車メーカーなど大口顧客の生産拠点が相次いで海外に移転していることが、神戸での高炉休止の背景にある。
休止を決めた神戸製鉄所の第3高炉は容積が2112立方メートル。日新製鋼の呉製鉄所(広島県呉市)と並び、規模で国内最小クラスだ。加古川にある自社の高炉と比較しても容積は半分だ。
高炉でつくる銑鉄から不純物を取り除き、鋼をつくるが、製鋼工程で用いる転炉も90トン級で、他の製鉄所に比べて3分の1程度の大きさだ。小回りが利くので多品種少量の需要に応えることができる。自動車エンジン向けの弁バネでは世界シェアの5割を握っている。
神戸製鉄所の高炉の跡地には火力発電所を建設し、電力供給事業を拡大する計画だ。栃木県でも火力発電所の建設を検討しており、電力卸売事業を第3の収益の柱にする。
●生産体制見直し進める高炉メーカー
今回の高炉休止は尼崎製鉄所の高炉を停止した1987年以来の大掛かりな生産体制の見直しとなる。今後、加古川製鉄所でつくった粗鋼を使って、神戸製鉄所で自動車向けの高級な製品を生産する。
神戸製鋼所は、2007年度にはフル稼働状態で807万トンを生産した。しかし、12年度には701万トンまで生産が落ちた。現在、生産能力の1割は余剰である。神戸製鉄所の生産能力は一般の高炉の半分以下で小規模だが、付加価値の高い特殊鋼を生産する技術力や小回りの良さで、これまでは新日鐵住金、JFEスチールと対抗してきた。
苦しい状況下で、高炉メーカーは次々と生産体制の見直しに着手した。3月には新日鐵住金が君津製鉄所(千葉県君津市)の高炉の休止を決めた。だが合併によって合理化余地ができた新日鐵住金と、単独で生き残るために高炉の休止を決断した神戸製鋼所では台所事情がまるで違う。粗鋼生産能力の削減幅は、新日鐵住金の7%に対して神戸製鋼所は17%。神戸製鋼所は大きな犠牲を強いられている。
神戸製鉄所の高炉は1995年1月の阪神大震災で緊急停止したが、わずか2カ月半で早期復旧させ、産業復興の象徴とも、神戸市民の希望の火ともいわれた。いわば、震災からの復興のシンボルとなった“神戸の火”を消すことになったわけだ。
(文=編集部)
●神戸製鋼所 1911年6月設立。建設機械や非鉄金属などの事業もあって、鉄鋼の比率は全体の4割強。高炉は神戸製鉄所に1基(粗鋼生産量、年120万トン)、加古川製鉄所に2基(同580万トン)ある。神戸は全体の2割の生産能力しかなく、休止しても加古川の稼働率を高めれば、いまの年間生産規模(700万トン)は保てるという。最初の高炉が稼働したのは1959年。高度成長期には3基がフルに動いていた。