ゆうちょ銀行、自前の住宅ローン参入を断念
ゆうちょ銀行は12年9月、個人・法人向け融資など新規業務に参入するため、金融庁と総務省に認可を申請した。認可を申請したのは、「住宅ローンなど個人向け融資」「住宅ローンに伴う火災保険など損害保険の募集」「法人向け融資」の3業務。株式上場に向けて収益力を強化するのが狙いだった。
株式を公開し、“民間銀行”になることで、地銀による「民業圧迫」の批判を封じ込めることを企図した。地銀は「ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の金融2社に政府出資が残る限り、公正な競争条件は確保されない」と反発した。
15年11月4日、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の郵政グループ3社は東証1部に同時上場した。だが、ゆうちょ銀行は自前の住宅ローンに参入できなかった。
ゆうちょ銀行は17年3月31日、自前の住宅ローンを断念。新たに貯金者向けの少額無担保ローンへの参入を申請した。12年に3業務の新規参入を申請していたが、ゆうちょ銀行の体制が融資業務を行うには不十分だとして、金融庁は認可しなかった。
しかし、これはあくまで建て前で、実際は地銀の猛反発に配慮したものだ。ゆうちょ銀行は、資金の大半を国債で運用する現行のビジネスモデルでは利ざやは小さく、住宅ローンなどの個人向け融資や法人向け融資への参入を準備してきた。
自前の住宅ローンはできない。これまで通り、スルガ銀行の金融商品の仲介業務にとどまるとみられる。
ところが、スルガ銀行は投資用不動産融資で不正が横行していた。内部調査の結果次第では、ゆうちょ銀行はスルガ銀行との提携解消に踏み込まざるを得なくなるかもしれない。ゆうちょ銀行が、住宅ローンでスルガ銀行に代わる新たな提携先を見つけることは、これまでの地銀の反発を考えると、難しいかもしれない。
今後、ゆうちょ銀行は住宅ローンをどうするのかが注目される。
(文=編集部)