経産省と首相官邸も関知か
ここで、ゴーン氏逮捕を事前に知っていたのは、特捜部のみであるかを考えてみよう。ゴーン氏は11月19日に羽田空港で逮捕されたが、特捜部は事前に到着日時を日産から入手し、羽田に着陸した日産所有のプライベートジェット機内に乗り込み任意同行を求めた。
「19日夕方にビジネスジェット機で羽田空港に到着したゴーン前会長は、機内に乗り込んできた東京地検特捜部の係官に任意同行を求められた際、長時間にわたって容疑などの詳しい説明を要求していた」(11月25日付毎日新聞記事より)
羽田空港には、プライベートジェット機の乗客専用の搭乗口と到着口がある。ゴーン氏が搭乗していたジェットの機体番号は「N155AN」であり、Nは登録地がアメリカであることを示すので、機内の管轄権はアメリカとなり、日本の管轄権は及ばない。つまり、特捜部が国土交通省の管轄である空港の制限区域内、さらには日本の管轄権の及ばない場所に立ち入るため、当然ながら国交省から事前に了承を得ている。つまり、国交省の幹部や国交相、さらには首相官邸に事前に情報が伝わっていなかったとは考えにくい。
また、日産内部では昨年3月から監査役を中心とした少数メンバーによる極秘捜査を開始し、6月頃に東京地検特捜部に相談後、捜査が本格化したという。この6月、経産省で商務情報政策局長、審議官、さらには内閣官房参与を務めた豊田正和氏が社外取締役に就任している。この経緯より、ゴーン氏逮捕における経産省の積極的な関与が想起されるのが普通であろう。さらに、ゴーン氏の逮捕後に、社外取締役3人によって会長候補者を選ぶ委員会が設置され、その委員長には豊田氏が就任し、12月4日に初会合を開いているが、経産省が関知していないとは考えにくい。
そもそも常識的に考えて、国際問題に発展する可能性があるゴーン氏逮捕を、その責任を取りようもない検察が単独で進めることなどあるのか。首相官邸が関知していると考えるのが自然だろう。