ただ、これはあくまで「親の所得や最終学歴と学力とが相関関係にある」というだけで、所得を高めれば子どもの学力も上がるという因果関係を証明しているものではない。また、一部の記事で、『子どもの学力は「母親の学歴」で決まる…?』という見出しとともにこの調査研究の内容がレポートされ、子育て中の母親たちにも衝撃を与えたようだが、これも同じだ。
所得の高い親は塾や予備校などにもお金を費やせるだろうから、その子どもは学力を高めやすい状況にあるのかもしれないし、子どもへの働きかけは、自分の経験によって異なってくるといったことは想像できる。特に子どもと接触時間の長い母親の影響は、父親より大きいかもしれない。
しかし、さらに調査研究を読んでいくと、別の面が見えてくる。それは、所得や親の学歴が高い層に比べて低い層では、学力のばらつきが大きいということ。裏返せば、所得や学歴といった「環境」に学力が決定されるのではなく、不利な環境を克服し、高い学力を達成している児童生徒も一定数存在することを示唆している。そこに、子どもの学力を伸ばすヒントがあるのではないか。
親の収入や学歴と関係なく、親の関わり方などが子どもの学力に影響
この調査では、学力の高い子どもの家庭ほど、子どもの時間の使い方をコントロールして計画的に勉強させるだけでなく、本や新聞等の活字文化や、外国語や外国の文化に触れる機会を意識的に作っているなどのほか、下の表にある行動をとっていることが明らかになっている。
これらの行動を見てみると、保護者からだけではなく、子どもからの働きかけも多いといえる。つまり親のほうから一方的に勉強や成績・進路などの話をするのではなく、子どもからも働きかけができる親子関係であることが、子どもの学力向上に有利に働くのではないか、ということだ。
今注目の「非認知スキル」が高い子どもは、学力が高い
それでは、不利な環境でも学力が高い子どもの家庭では、どのようなことをしているのだろうか。
調査研究では、大都市で経済的困難等を克服している家庭の特徴として、「毎日子どもに朝食を食べさせている」「携帯電話やスマートフォンの使い方についてルールや約束をつくっている」「子どもに本や新聞を読むようにすすめている」「子どもと読んだ 本の感想を話し合ったりしている」「子どもと何のために勉強するかについて話している」「美術館や劇場、博物館や科学館、図書館に行く」「蔵書数、子ども向けの本の数ともに多い」が挙げられている。所得が高く学力の高い家庭と同様の働きかけを行っているのだ。