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小林敦志「自動車大激変!」

レクサスの名に恥じない新型ESがコスパの高い“上級セダン”と言える理由

文=小林敦志/フリー編集記者
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LEXUS ‐ ES」より

 前回、新型「レクサスES」の試乗を踏まえて、アメリカにおけるレクサスブランドの販売事情について述べた。

 アメリカで年間4万台強販売したレクサスESが、日本国内でも初めて2018年にレクサスESとして発売されると、たちまち注目されるようになった。ただ、アメリカのように“中間管理職の憧れのクルマ”といった背景ではなかったのである。

 2017年10月に、5代目となる現行レクサスLSが国内デビューした。ところが、デビューした現行型は全長が5235ミリメートルとなり、5メートルを超えた。これが現行LSの販売にブレーキをかけてしまったのである。購入検討するのは富裕層となるのは察しがつくが、日本では駐車スペースで全長が5メートル超に対応しているところは少なく、富裕層の住む豪邸のガレージであっても物理上停められなくなってしまうケースが多発してしまったのである。

 デビュー当初はレクサスLSにV8もなくなったということで、LSをあきらめレクサスGS F(V8搭載モデル)がよく売れるなど“珍事”が発生したが、レクサスESがデビューすると「これで十分」と、富裕層のなかからもレクサスESが選ばれるケースが多発したというのである。つまり、先代レクサスLSオーナーなども車庫に入らず、現行モデルへの乗り替えに困っているときにレクサスESが登場したので、それを購入して乗るようになったのである。

 そもそも日本ではレクサスブランド内にアメリカほどの強烈なヒエラルキーはなく、基本は所得に余裕のある人がレクサスオーナーのメインとなるが、職業や社会的地位、収入にそれほど関係なく購入可能な人が、自分たちの使用環境(車庫の広さやコンパクトなモデルに乗りたいなど)に応じて、気に入ったレクサス車を選んでいるように見える。

 その点では、日本の新車販売の世界はアメリカほど“縛り”のない“選択の自由”があると筆者は感じている。アメリカでは“FFよりFRのほうが偉い”という考え方が根強く、アウディは最近まで「FFベースなのに、なんであんなに高いんだ」とアメリカでは“不思議なブランド”扱いであったが、クワトロ(AWD)を全面に押し出し、最近はステイタスを一気に上げている。

 ホンダのプレミアムブランドであるアキュラはアウディ以上にFF臭が強い部分で苦戦しているという話もある。しかし、日本では良くも悪くも、今の社会ではアメリカほどクルマへ強いこだわりを持つ人は限定的となっている。当然、駆動方式への強いこだわりを持つ人も限定的なので、より広い層にレクサスES(FF)が、かなり上級の“ラグジュアリーサルーン”として受け入れられているのである。

 ただ、個人タクシーではLSやセンチュリーなども見かけるが、最近では法人タクシーとしてレクサスESがタクシー車両として街なかを走っているシーンを頻繁に見かけるようになった。アメリカ人が見れば、なんとも不思議な光景に見えるかもしれない。

レクサスブランドに恥じない新型ES

 今回初めてレクサスESを試乗したのだが、“カムリの豪華版”というのが、かなり荒っぽい表現であるのがよくわかった。内外装は完全に異なるし、ステアリングフィール、足回り、どれをとっても、レクサスブランドに恥じないものとなっており、道路の継ぎ目もショックも少なく“いなす”、その様子をみると、良い意味で「これで十分」となるのも納得してしまう。

 重箱の隅をつつくような見方をすれば、カムリっぽさがないわけではないが、レクサスブランドセダンのエントリーモデルだけではなく、昨今のダウンサイズニーズにも対応し、“レクサスLSからの受け皿”という面も重視されて開発されているような印象も強く受けた。

 よく「なぜ、インフィニティ(日産の上級ブランド)やアキュラ(ホンダの上級ブランド)は日本で展開しないんだ」という話を聞く。それは、諸外国ほど社会において明確なヒエラルキーが日本では存在しないことが大きい。つまり、日産とインフィニティ、ホンダとアキュラの違いが日本の自動車ユーザーには、はっきりしないのである。格差社会の広がる日本の社会とされているが、アメリカをはじめ諸外国ほど強烈な格差社会にはまだ至っていないことも影響しているようだ。

 2005年にレクサスブランドの日本展開をスタートさせたとき、大きくて豪華なショールームや、独特の上質なスタッフの言葉づかいや接客姿勢が話題となった。日本国内ではクラウンなどの存在で、すでにトヨタブランドのイメージが世の中では高まっていた。そのなかで「クラウンより上級車ですよ」というだけでは、なかなかレクサスブランド車について消費者の理解は得られない。そこで、店舗展開も含めた“レクサスブランド”というものをアピールしたのではないかと筆者は考えている。

 メルセデスベンツやBMWは、老舗輸入車ディーラーも取り扱っていることもあり、日本では絶大なブランドパワーを構築している。そのような市場環境で、トヨタでさえ店舗展開まで特別なものとして国内市場でのレクサスブランド展開へ挑戦していった姿勢を見て、「ウチ(日産やホンダ)では無理だ」と日本市場での展開を留まったといった話もまことしやかに聞いている。

 アメリカではレクサスLSより明らかに低く見られているレクサスESだが、日本ではレクサスLSと同列と見られているケースが多いのは確か。

 試乗したモデルはオプション込みで700万円オーバーとなっていた。車両本体価格のみで見ると、少々贅沢なトヨタ「アルファード」が買える程度の支払い総額である。アルファードは今や年間10万台強を販売する“大衆ミニバン”となっている。そう考えると、ESはコストパフォーマンスの高い“上級プレミアムサルーン”と表現もできる。

 ただ、日本では欧米など諸外国ほど社会的ステイタスを強く意識して新車を購入しているかといえば、超高級輸入ブランドやメルセデスベンツ、BMWなどの欧州系上級ブランドを除けば答えは“ノー”だろう(趣味で選ぶ欧米ブランドを除く)。生活レベルでは格差社会が広がっているとされる日本だが、購入予算さえ用意できれば、それこそ欧州上級ブランド車も含み、好きな新車を選んで乗ることができる日本の新車販売事情は、世界的に見ても“選択の自由”がまだまだあるフラットな世界といっていいだろう。新型ESに触れながら、ふとその立ち位置などを考察してしまった。

(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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