老若男女、国境を越えてコミュニティを生み出す
先日、たまたま観ていたテレビ番組で、新進気鋭の社会学者である古市憲寿氏が、最近ポケモンGOを再開したという話をしていたが、フレンド機能の搭載は、彼のような復活組を多く生み出している。リリースから1年もたった17年半ばには、ポケモンGOをプレイし続けていることを話すと、「まだやってんの?」と訝しげに思われることもたびたびあったが、最近は再びプレイヤーが増加している。リリース当初にいわば“ノリ”でインストールし、プレイしていた方々が大量に「復活」しているのだ。それはこのフレンド機能の搭載に依るところが大きい。ポケモンGOがSNS(ソーシャル・ネット・ワーキングサービス)としての機能を搭載したとも言え、ゲームの性質がポケモンの「捕獲と収集」から、総合的な「コミュニケーションツール」へと進化したのである。
それに伴い、ポケモンGOがつくり出すリアルな社会におけるコミュニティ創出機能も一層注目され始めた。それを促し、補完する役割を担っているのが、TwitterやFacebook、LINEなどのSNSである。ポケモンGOのプレイヤーにとって、それぞれのSNSは使用方法が異なり、Twitterは主に関連情報の発信・収集のためのツール、Facebookは愛好者が集まるコミュニティ、そしてLINEは目的を限定したグループ化のため、といった具合に使われている。
ポケモンGOでは、各プレイヤーはレベル5に到達すると、青、赤、黄の3つのカラーのチームを選択し所属することになるのだが、レアポケモンが登場する時間帯ともなると、おそらくそのジムの界隈に住んでいたり、働いていたりするプレイヤーが、色別に分かれて集まっていることがある。彼らはLINEでグループをつくり、時間を合わせて集まっている場合が多い。彼らはその多くがポケモンGOを始める以前は互いに見知らぬ関係であったが、同じ公園などでたびたび顔を合わせる機会が増えた。そこに自然と会話も生まれていくことで、ご近所さんがつながり、その情報交換ツールとしてLINEが使われている。
また、Facebook上には、いくつものポケモンGOプレイヤーの参加するコミュニティが存在する。紹介制、登録制のクローズドなコミュニティとなっているものが多いが、Facebook上のリアルな友人を通じて紹介を受け、こうしたコミュニティに参加するや、ポケモンGOをプレイする楽しみは何倍にも大きくなる。筆者自身、そのうちのひとつに友人からの紹介で参加しているのだが、それまでひとり黙々とプレイしていたにすぎなかったものが、Facebook上での情報交換に始まり、コミュニティへの参加者がリアルに集まるイベントへの参加を通じて、ポケモンGOという共通項を持つ多様な人々とのつながりを得る機会となっている。
ここで特徴的なのは、このコミュニティに所属する600人超のプレイヤーのバックグラウンドが多彩ということだ。企業役員や部長クラスを含むビジネスパーソン、プログラミングに長けたITベンチャー経営者、大学・シンクタンク等の研究者、さらに子供時分に原作ポケットモンスターをプレイしていた20代のメンバーなど、実にバラエティに富む。海外在住の方もいる。なかでも原作経験者は、ポケモンGOを進める上で重要な要素となるポケモン間の相性などに精通していることから、50代以上のシニア層が20代の若者に教えを請うといった光景も日常的に見られる。
コミュニティのメンバーがFacebook上のみならず、時折、リアルなイベントでも集まり、レアなポケモン捕獲を目指して街を歩き、共にレイドと呼ばれるバトルを戦うというプロセスを通して、メンバー同士の信頼関係はより一層、強くなっている。筆者自身、18年最大の発見と出会いは、このコミュニティに参加したことだと言っても過言ではない。このコミュニティから、新たなビジネスさえ生まれるのではないかと思わせるほどである。