原油価格下落、消費増税迎える日本経済に“想定外の恩恵”…国内所得、約3兆円増加も
はじめに
原油価格が下落している。ドバイ原油は昨年12月から1バレル=50ドル台で推移しており、経済活動に及ぼす影響が注目される(資料1)。原油価格が下落すれば企業の投入コストが低下するため、変動費の減少分が大きいほど利益に対する押し上げ効果が大きくなる。また、価格下落が最終製品やサービスまで転嫁されれば、家計にとっても消費者物価の下落を通じて実質購買力の上昇をもたらす。そうすると、企業収益の売り上げ面へも恩恵が及び、個人消費や設備投資を通じて経済成長率にも押し上げ要因となる可能性がある。
50ドル推移で家計の負担減は+1,100円/月
ドル建ての原油先物価格をみると、月平均のドバイ原油は昨年10月から下落に転じ、今年1月までに▲27.9%下落している。一方、円も対ドルで昨年10月から昨年12月までに▲3.9%増加(円高)しており、交差項の影響も含めれば、円建てドバイ原油価格はこの3カ月で▲30.8%程度低下したことになる。(資料2)
そこで、家計への影響を見ると、タイムラグを伴って消費者物価へ押し下げ圧力が強まることがわかる。事実、2006 年1月以降の原油価格と消費者物価の相関関係を調べると、円建てドバイ原油価格の+1%上昇は4カ月後の消費者物価を約0.013%押し上げる関係があることがわかる(資料3)。
従って、円建てドバイ原油価格▲30.8%下落の影響としては、消費者物価を4カ月後に30.8%×0.013%●【編注:ニアリーイコール】0.39%pt 程度押し下げる圧力となり、家計に恩恵が及ぶことになる。
具体的な家計への負担軽減額として、2017年度における2人以上世帯の月平均支出額約28.5万円(総務省「家計調査」)を基にすれば、0.39%pt の消費者物価の下落は4カ月後の家計負担を28.5万円×0.39%●【同上】1,104円/月程度、年額に換算すると1.3万円以上減少させる計算になる。
経済成長率を押し下げる原油高
よりマクロ的な経済への影響について、内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2018 年版)の構造と乗数分析」の乗数を用いて試算すれば、今年の原油先物価格が70ドル/バレル程度で推移した場合には、今後2年間の経済成長率への影響はほぼニュートラルとなる。しかし、今年の原油先物価格が平均60ドル/バレルもしくは50ドル/バレル程度で推移したとすれば、今後2年間の経済成長率をそれぞれ+0.04、+0.02%ポイント、+0.08、+0.04%ポイント程度も押し上げることになる。このように、原油価格の下落はマクロ経済的に見ても、無視できない恩恵をもたらす可能性がある(資料4)。