昨年(2016年)9月下旬、日本銀行は量的・質的金融緩和(いわゆる「異次元緩和」)を軌道修正し、短期金利を▲0.1%に誘導するマイナス金利政策を維持しつつ、長期金利を0%に誘導する新しい金融政策の枠組みの導入を決定した。この新たな枠組みにより、「量」を重視する政策から、「金利」を重視する政策に転換することを明らかにした。
しかし、異次元緩和の軌道修正を図ったといっても、これまで年間約80兆円のスピードで日銀が長期国債を買い取っていたものを、今も年間で約70兆円のスピードで買い取る程度に減速しているだけで、国債市場が干上がるという「異次元緩和の限界」が完全に解消されたわけではない。
では、現状では、異次元緩和の限界はいつ頃に到来する可能性があるのか。正確な予測は極めて難しいが、いくつかの前提を置けば、それは日銀が公表する「資金循環統計」から作成した以下の図表から読み取れる。
まず、図表の黒色の太線は政府の借金である「国債残高(A、右目盛)」(資金循環統計の「国債・財投債」をいう。以下同じ)の推移を表す。そのうち、赤色の太線は「日銀(B、左目盛)」が保有する国債残高、青色の実線は民間の「銀行等(C、左目盛)」が保有する国債残高、緑色の実線は「保険・年金基金(D、左目盛)」が保有する国債残高、青色の点線は「その他金融仲介機関(E、左目盛)」(例:公社債投信)が保有する国債残高、黒色の点線は「海外(F、左目盛)」が保有する国債残高の推移を表す。
また、2016年Q3(7~9月)までは上記A~Fの「実績」であるが、2016年Q4(10~12月)以降は「予測」である。具体的には、次のような仮定を置き、上記A~Fの数値を延伸した。
長期国債を買い増す政策、再び見直しか
まず、政府の借金である「国債残高(A)」は07年Q1(1~3月)から16年Q3までの増加が年間約30兆円であるが16年Q4以降、政府の借金である「国債残高(A)」は年間約32兆円のペースで増加するものとした(注:この設定は、現在逼迫する国債市場の需給を若干緩和するもの)。また、現行の金融政策を実行するため、「日銀(B)」は2014年Q1以降、ネットで年間70兆円の国債を買い増し、そのほかのC~Fは保有する国債残高を維持するものとした。