人気アニメ『蒼穹のファフナー』シリーズ最新映画作品を手がける「蒼穹のファフナー THE BEYOND」製作委員会は23日、公式サイト上で『「喰海」メニューコラボレーション中止のお知らせ』と題した謝罪文を公開した。合わせて広島県尾道市の“尾道ラーメン店”「喰海」とのコラボレーションの中止を発表した。
中止の理由は「お客様の心を傷つけるような言動あった」からという。実は同店店主に対し、今月上旬ごろから、Twitter上などで「ファフナー」ファン(通称“島民”)の女性からセクハラ被害の告発が相次いでいたのだ。今回の謝罪でそうした事実があったことを製作委員会が認めたというかたちだ。製作委員会の発表は以下の通り。原文ママで引用する。
<いつも「蒼穹のファフナー」プロジェクトを応援いただき、誠にありがとうございます。
現在メニューコラボレーションを開催しております「喰海」につきまして、コラボレーション期間中に、複数のファンの皆様から、キングレコード、コラボレーションを取りまとめておりますマッシュアップエンターテイメントおよびコラボレーション情報を発信しているMUEステなど、関係各所にご意見を頂戴しました。
内容は、「喰海」店主により、お客様の心を傷つけるような言動があったというものでございます。製作委員会としましては、いかなる状況であっても、そういった振舞いは許されるものでは無いと判断し、「喰海」とのコラボレーションを中止する決定を致しました。
ファンの皆様に、作品のロケ地のひとつである尾道の雰囲気を楽しんでいただける企画として、ありがたくも第4弾のコラボレーションを開催しているさなかに、開催店舗にてこのような事案が発生しましたことを、深くお詫び申し上げます。
日頃より作品を応援してくださっているファンの皆様に、多大なご心配をおかけすることとなり、大変申し訳ございません。
改めて気を引き締め、皆様にお愉しみいただけるコラボレーションとなるよう、開催各店舗とともに、より一層の精進と鋭意努力をしてまいります。
何卒、宜しくお願い申し上げます。「蒼穹のファフナー THE BEYOND」製作委員会>
「心を傷つけるような言動」とはなにか?
ファフナーシリーズのテーマは「島・ロボット・群像劇・少年少女」。未知の生命体「フェストゥム」の襲来により滅亡の危機に瀕した人類を守るため、南海の孤島“竜宮島”に住む少年少女たちが巨大ロボット「ファフナー」に搭乗して戦うという物語だ。この作品の舞台となる“竜宮島”は広島県尾道市や福山市がモデルとされており、多くのファンが“聖地巡礼”のために両市を訪れたり、特産品を購入したりしている。
今回のコラボレーションも上記のような背景で企画されていたようだ。発端は「喰海」と同作とのコラボに盛り上がるファンたちに向け11月10日、ある女性ファンがTwitter上に投稿した次のような一文だった。
<楽しいお祝い空気に水を差すのはとても嫌ですが、女性客を後ろから突然両肩掴んで「セクハラw」は無いです ありえないです 怖かったです 普通に気持ちが悪いです、なんですかセクハラって そうですよ悪いことですよ自覚ないんですか>(原文ママ、以下同)
この投稿後、同店店主の言動に対して懸念を示す声が続いた。別の投稿者は食事後、店主から「好きな機体の話」を振られ、一緒に食事していた知人男性が「ゼロファフナー」と回答したところ、「いいよね!じゃあ昨日は彼女とクロッシングしたんだね!俺もクロッシングしたい!」などと言われたと告発した。
設定では「ゼロファフナー」は2人乗り。作中キャラクターの西尾里奈、暉の姉弟ペアと西尾里奈、鏑木彗のペアが搭乗した人気機体だ。なお「クロッシング」は搭乗者らの意志疎通に関する作中の技術用語なのだが……。アニメグッズ企画製作会社の女性関係者は次のように話す。
「この言い回しだと、おそらく作品を知っていても知らなくても、セクハラと取りますよね。他の意味に取れない。コラボ先の店主とファンのふれあいはとても大事です。とはいえ、超えてはいけない一線はあります」
最終的に製作委員会に抗議へ
一方、「喰海」公式Twitterアカウントはこうしたファンからの指摘に対し、以下のように謝罪していた。
本日、池袋でご来店していただいたお客様に自分の行動です非常にふ 不快な思いをさせてしまいました。
— 喰海大将 (@enokichikun) November 10, 2021
本当に申し訳ございません。
今後、この様に思われないように改めて自覚を持って接客をさせていただきます。
本当にすいませんでした。
<本日、池袋でご来店していただいたお客様に自分の行動です非常にふ 不快な思いをさせてしまいました。本当に申し訳ございません。今後、この様に思われないように改めて自覚を持って接客をさせていただきます。本当にすいませんでした。>
だが謝罪に誤字があったことなどから、ファンの不信感は高まり続け、最終的に製作委員会などに抗議がなされたようだ。アニメに携わった経験のあるキー局関係者は話す。
「アニメのコラボレーション企画は、そのコンテンツを支えてくれているコアなファンが集う大切な場です。そのファンが離れたり、不快に思ったりする事態は絶対に避けなければいけません。こうした事例では告発したファンに対し、別のファンが『コンテンツをつぶす気か』などともめ事になるケースもあります。しかし、すべてのファンの皆さんに楽しんで頂きたいというのが、製作陣に共通する思いです。
どこの製作委員会でも、こうしたことが起こらないよう注意を払っているとは思いますが、コラボ先の関係者の人間性や言動まで管理するのは容易ではなく悩みは深いです。
ただこうした事例が続くのなら、コラボ企画を受けていただく相手先にセクハラ防止講習を受けていただくとか、厳密な注意事項やもしもの時の損害賠償請求の可能性を記した契約書などを用意しなくてはならなくなるかもしれません」
コンテンツに関わる全ての関係者の立ち居振る舞いが、今、あらためて問われているのかもしれない。
(文=編集部)