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高橋篤史「経済禁忌録」

リクルート株詐欺事件が発生…容疑者が逮捕、巨額の金を騙し取る手口の全貌

文=高橋篤史/ジャーナリスト
リクルート株詐欺事件が発生…容疑者が逮捕、巨額の金を騙し取る手口の全貌の画像1「Gettyimages」より

 かつて東証1部に上場していたユニオンホールディングス(2010年2月に上場廃止)の河西宏和元会長(77)が1月10日、横浜地検によって逮捕された。一般には流通していない秘密の株を安く買えると持ち掛け、大金を騙し取っていたという。ここ十数年、各地で出没する未公開株詐欺の一種だが、これを機にひとつ、有象無象が騙し合う異次元の世界をじっくり見てみよう。

 河西元会長は平成バブルの代表格であるEIEグループの元幹部だ。総帥・高橋治則氏(05年7月死去)の側近中の側近で、バブル崩壊後は上場不振企業を手玉に取る増資マフィアの一派「草月グループ」で幹部を務めた。が、ここ10年ほどは借金に追われどおしだったようで、苦し紛れにリクルート株詐欺に及んだらしい。関連する民事裁判によると、事件は次のようなものだったという。

 今から4年前の15年3月4日、河西元会長は知り合いのブローカーを介して滋賀県草津市の人材派遣会社「西日本商務」の創業者と会った。場所は東京駅八重洲地下街の寿司屋。西日本商務は当時、経営難にあり、創業者の保有株も3割は借金のかたとして元税理士に取られてしまっているような状況だった。

 河西元会長はこう持ち掛けたという。「知り合いの証券会社が市場に流通していないリクルートホールディングス株を3500万株持っている。これを市場での株価の半値ほどの1株1500円であなたに売ることができる」――。(もちろん嘘なのだが)この話を信じれば、都内の新興証券会社は発行済み株式の約6%にあたる大量のリクルート株をひそかに保有していることになる。上場時に売れ残ったためらしい。仮にそれを525億円ですべて買い取って市場で売り抜ければ500億円超が丸儲けになるわけだ。

 経営難にあった西日本商務の創業者はこの濡れ手で粟の壮大な儲け話に飛びついた。経営指南役として同社に影響力を行使していた前述の元税理士も乗り気である。初顔合わせから13日後、創業者は東京・銀座の「ドトール」で再び河西元会長と会う。その場で3500万株すべてを525億円で買い取る方向が確認されたという。

 しかし、そんなまとまったカネが西日本商務にあるはずもなく、翌18日付でまず売買契約を交わしたのは3万株だけとなった。河西元会長からは証券会社名による「株式保有証明書」がFAXで送られてきて、創業者は話をすっかり信じ込んでしまっていた。西日本商務は翌19日に1000万円、さらに30日に同額を手付金として支払った。送金先は河西元会長が代表理事を務める「一般財団法人嘯月美術館」(山梨県南アルプス市)だった。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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