現在、ソニーは急激な環境変化に直面している。その変化のなかで、同社はいずれの事業を中心に収益を上げ、持続的な成長を目指すか戦略の策定を迫られている。それが、2月1日にソニーが公表した第3四半期決算の内容を見た印象だ。
2012年4月から2018年3月まで、ソニーは変革に取り組み成長を実現した。それを支えたのが、平井一夫前CEOの経営戦略だ。その結果、昨年7月にソニーの時価総額は、15年ぶりにTOPIXの電機セクタートップに返り咲いた。また、昨年9月末にソニーの株価はリーマンショック後の最高値を更新した。
ただ、2018年10月以降、中国経済の減速など事業環境が大きく変化している。特に、スマートフォンの販売減少は急速だ。それがソニーの半導体事業の減益要因となった。昨秋以降、米国を中心に株価が大きく下げる場面も増えている。こうした環境の変化は、ソニーの経営リスクが高まっていることを意味する。これまでの発想を続けることによって成長を維持・強化していくことが可能とはいいづらくなっている。この状況を打破するためには、ソニーの経営陣が新しい発想を大胆に取り入れて、収益力の高い最終商品をつくり出すことが求められる。それが、ソニーの将来を左右するといっても過言ではないだろう。
ソニー復活を支えたセンサー部門
ソニーの事業領域は大きく8セグメントに分かれている(ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、ホームエンタテインメント&サウンド、イメージング・プロダクツ&ソリューション、モバイル・コミュニケーション、半導体、金融)。このなかで近年の経営の再建は、センサーを中心とした半導体事業の成長に支えられてきた。ただ、足許、半導体事業の収益は急速に減少している。それは、同社の経営が大きな変化の局面を迎えたことにほかならない。
具体的に、平井氏はCMOSイメージセンサー事業の成長を重視し、経営資源を当該分野に再配分した。平井氏は、スマートフォンや自動車のセーフティ技術の向上のためにイメージセンサーへの需要が高まると考えた。また、ソニーはデジタルカメラなどの開発を通して、関連する技術でも競争力を持っていた。
既存の技術力を生かして、新しい事業を育成するために、同氏は“創業の地”として知られる品川区御殿山にあった本社ビルの売却などに踏み切った。この意思決定に関して、最先端の技術を生み出し、それを実用化することで成長してきたソニーのアイデンティティが失われてしまう、といった懸念を持つ市場参加者は少なくなかった。