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ソニー、15年ぶり“国内トップ”の繁栄再来に潜む死角…部品メーカー化の代償

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 2016年度まで半導体事業の営業利益は赤字だったものの、2017年度の営業利益は1640億円にまで急拡大した。これは、エレクトロニクス企業としてのソニーの復活を市場参加者などに強烈に印象付けた。

 この成長は世界的なスマートフォンの普及に支えられた。同時にソニーの業績は、世界的なスマートフォンの売り上げ動向に左右されやすくなった。重要なことは、ソニーがかつての「ウォークマン」のようにヒット商品を自ら生み出して業績を達成してきたのではなく、他の企業の製品需要に左右されやすくなったことだ。これはソニーが民生分野でのヒットメーカーから、技術を生かした部品メーカーに姿を変えたことと言い換えることもできる。

革新的な製品だったアイボとIoT

 平井氏は、ヒットメーカーとしてのソニーを目指した。その象徴が、2006年に製造中止となった犬型ロボット「AIBO(アイボ)」の販売再開だ(新型はaibo)
。この背景には、人工知能の開発力の向上などを通してIoT(モノのインターネット)分野での商品開発力を高め、持続的な成長を目指すソニーの狙いがあった。アイボの販売再開は、市場参加者に、ソニーが最先端の技術やテクノロジー開発への情熱を持ち続けていることを強烈に印象付けたように思う。

 ソニーのビジョンを一言で表せば、自宅に「ドラえもん」がいる世界だ。アイボはクラウドコンピューティングシステムと連携することで、自律的に行動し、成長する。自らの意思で写真を撮影することもできる。すでにアイボには外出先から自宅の状況をモニターする機能(aiboのおまわりさん)が搭載されるなど、自律的に活動する範囲は拡大している。ソニーがアイボをどのように普及させることができるかは、世界のIoT市場に無視できない影響を与えるといっても過言ではない。

 現在、家庭向けのIoTデバイスとしてアマゾンのエコーをはじめとするスマートスピーカーが注目されている。ただ、スマートスピーカーは自律的に移動しない。ソニーがアイボに高性能な人工知能を搭載し、エンターテインメント事業などとの融合や、他のIT先端企業などとの協業を増やすことは、アイボが活躍する範囲を広げることにつながるはずだ。

 すでにソニーはアイボのWeb APIを無償で提供する予定である。これは、ソニーが新しい発想を積極的に取り入れ、人工知能などのテクノロジー開発力の向上を目指していることを示している。そのうえで、ソニーがアイボとゲームやエンターテインメントなどの要素を結合させることができれば、私たちの生活は大きく変わる可能性がある。

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