昨夏の猛暑の影響で予想される花粉の大量飛散
昨夏は記録的な猛暑に見舞われた。特に7-9月期の全国平均気温は平年を+1.0℃上回り、2013年以来の高温となった。この影響により、今春は花粉が大量に飛散する可能性が高まっている。ウェザーニュースが2月20日に公表した「第四回花粉飛散傾向」によると、今春の花粉は6年ぶりの大量飛散の恐れとされている。また、スギ花粉の飛散量のピークは3月中旬までとされており、東日本を中心に大量飛散が懸念される。
花粉の飛散量に関係する統計として、前年夏の平均気温や日照時間がある。昨夏の記録的猛暑の影響で、今春の花粉飛散量が2013年以来の大量飛散になる可能性も指摘されているが、実際に2018年夏の平均気温と日照時間の程度を見ると、2013年以来の高水準だったことがわかる(資料1)。
花粉症は日本人の3人に1人が患者ともいわれ、今や「国民病」と呼べる存在であり、花粉の大量飛散が現実のものとなれば、経済全般にも影響を及ぼすことが想定される。そこで本稿では、花粉が大量飛散した場合、日本経済にどれほどの影響を及ぼすのかについて分析してみたい。
花粉の大量飛散をもたらす前夏の猛暑は1-3月の家計消費に悪影響
花粉の大量飛散は、主に以下の経路を通じて日本経済に影響を及ぼすことが想定される。まず、花粉が大量に飛散すれば、花粉症患者を中心に外出が控えられ、個人消費に悪影響を及ぼすことである。具体的にはレジャーや小売、外食関連等の売れ行きが不調になると見られる。
実際、前年夏の気温と1-3月期の家計消費支出には関係がある。1-3月期の家計消費(前年比)と前年7-9月期の気温(前年差)の関係を時系列で見ると、夏場の気温が前年を上回った翌春の消費は概ね減少する関係があり、前年の猛暑は翌春の個人消費にとってマイナスであることが示唆される(資料2)。
そして、1-3月期の家計消費水準指数の伸び率と前年7-9月期の平均気温(全国平均の前年差)の相関を品目毎に見てみると、2000年代以降では外食を含む「食料」、レジャー関連を含む「教養娯楽」、外出頻度が増えれば支出されやすくなる「被服及び履物」等の支出で前年夏の平均気温と強い負の相関関係が現れている(資料3)。一方、外出頻度が下がれば支出が増えやすくなる「光熱・水道」や、薬やマスク・医療費等を含む「保健医療」や空気清浄機などを含む「家具・家事用品」等の支出で正の相関関係が現れている。
また、店舗形態別の売上との関係を見てみると、「百貨店」では花粉の大量飛散による負の相関が観測される一方で、「スーパー」で正の相関が観測される。この背景としては、花粉症になると百貨店に遠出して買い物する頻度が少なくなる一方で、近所のスーパー等での買い物の頻度が高くなるためと推測される。