10年連続で全日・プライム・ゴールデンの全3部門で個人視聴率1位を獲得し、年間視聴率3冠に輝いている日本テレビに異変が起きているという。
日テレといえば、『行列のできる法律相談所』や『世界の果てまでイッテQ!』『世界一受けたい授業』『ザ!鉄腕!DASH!!』などの人気バラエティ番組を数多く抱えるほか、夜のニュース番組『news zero』は安定的に平均世帯視聴率2ケタをキープし、毎年恒例の『24時間テレビ 愛は地球を救う』は瞬間最高視聴率20%超えを記録するなど、好調そのもののようにみえるが――。
「たとえば『イッテQ!』は以前は世帯視聴率15%超えが当たり前で日曜20時台で首位をキープしてきたが、2018年に同時間帯で『ポツンと一軒家』(テレビ朝日)がスタートすると、徐々に視聴率は低下傾向となり、『ポツンと一軒家』に後塵を拝することも多くなってきた。また、日曜19時台で盤石の強さを誇ってきた『鉄腕DASH』も、最近では裏の『ナニコレ珍百景』(テレ朝)に負ける日も珍しくない。こうして人気番組の視聴率がじわじわ低下していることもあり、今年の年間視聴率争いではゴールデン帯のトップをテレ朝に明け渡してしまう可能性もあるといわれている」(テレビ局関係者)
そして、さらに日テレ上層部に危機感をもたらせている事態が進行しているという。
「昨年4月に日テレでスタートしたゴールデン帯の『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』が視聴率15%に届く勢いで好調だが、日テレが諸手をあげて喜べないのは、制作が地方系列局の中京テレビだという点。一本当たりの制作予算は『イッテQ!』の数分の一で、完全に企画力の勝利。低予算の『オモウマい店』の健闘によって日テレの番組企画力の低下が浮き彫りになるかたちになってしまった。
このほかにも同じく系列局の読売テレビ制作で昨年2月に単発で放送された『ニッポンのレジェンド発掘SP さいしょの人はスゴかった!!』も、日曜午後3時台という時間帯ながらも視聴率6%に少し届かないほどと健闘し、今年2月の第2弾放送が決まっているが、その数字によっては夜帯でのレギュラー化も検討されると聞く。
日テレとしては、系列局制作の番組が増えれば制作コスト低減につながるというメリットがある一方、あまり系列局制作の番組ばかりが目立つと“示しがつかない”という事情もあり、痛しかゆしの面もあるのが悩ましいわけです」(日テレ関係者)
長い一人勝ちの弊害
そんな日テレの“体力低下”の背景について、別の日テレ関係者はいう。
「フジテレビとの激しい視聴率争いの末に3冠を奪取した20年くらい前、制作畑の若手は全員、下っ端のADとしてみっちり現場仕事を叩きこまれ、1週間家に帰れないなどザラで、それこそゼロから企画を立ち上げて番組をつくっていかなければならなかった。そうしたなかで、現在まで続く人気番組が生まれてきた。
だが、ここ10年ほどはあまりに長い間、日テレの一人勝ちが続いてしまったため、スタッフは既存の人気番組を回していればよくなり、ろくに新番組立ち上げの経験もないまま、早ければ30代でP(プロデューサー)になるほど出世も早くなった。その結果、日テレの威光を笠に着て制作会社などに偉そうな態度を取り、肩で風を切るような勘違い局員が目立つようになった。こうした現象は、かつて年間視聴率3冠の座を不動のものとして黄金時代を築いていた頃のフジテレビとまったく同じ。フジはそこに胡坐をかいたために今の低迷につながっている」
そうした“失敗の法則”を認識している日テレ上層部は、危機感を抱いているという。
「『人生が変わる1分間の深イイ話』と『今夜くらべてみました』が来春の番組改編で打ち切りになると報じられているが、2番組とも視聴率が悪いわけではない。数字が飛びぬけて良いわけではないが悪くもない番組を続けるのか終わらせるのかというのは、編成にとって悩ましい問題。たとえ終わらせても新番組が視聴率的にそれを上回る保証はなく、打ち切りというのは怖い面がある。
今回、それでもウチが『深イイ話』と『今くら』の終了という決断をしたのは、中途半端な番組をダラダラと続けるよりは、新番組に挑戦することで局全体の新陳代謝や番組制作力アップを図るという大局的な見方があるからだろう。局内に対しても“数字が悪ければ容赦なく終わらせますよ”という姿勢を示すことで、良い刺激にもなる」(同)
もっとも、テレビ業界全体を取り巻く状況の変化を指摘する声もある。
「この業界に身を置く人間であれば誰しも、業界全体が先細りであることは百も承知で、数年後にはキー局同士での合併や経営統合など業界再編が起こるという見方もあるほど。さらに、コロナ禍で人々のNetflixやAmazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスやゲームの利用機会が増え、テレビの衰退に拍車をかけたのは間違いない。局同士が内輪で“数%勝った、負けた”と視聴率争いに明け暮れたところで、結局、縮小するパイを奪い合っているだけで何の意味もない。業界全体が根本的なビジネスモデルの転換を求められている」(テレビ局関係者)