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『紅白』視聴率が歴代最低の原因…10~40代が1割減、65歳以上単身も減

文=Business Journal編集部、協力=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表
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(C)鈴木祐司/次世代メディア研究所

 毎年大みそか恒例の音楽番組『NHK紅白歌合戦』が先月31日に放送され、第2部の平均世帯視聴率が31.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となったことが発表され、2部制が始まって以降の歴代最低となったことがわかった。前年(35.3%)より3.4ポイントのダウンとなった(第1部は前年<31.2%>より2.2%ダウンの29.0%)。第1部は初の30%割れ。

「ボーダレス」を番組テーマに掲げた今回の『紅白』。従来と大きく変わった点といえば、例年数多くのグループが出場していた現SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)所属アーティストの出場が44年ぶりにゼロになったことだ。白組の初出場組が8組になり、Stray Kids、SEVENTEEN、NewJeansなど韓国の人気グループが出場した。

「主要視聴者層である60代以上に受け入れられたのかは別として、全体的に新陳代謝が図られ『紅白の閉そく感』が弱まったのは、ジャニーズ問題の思わぬ余波。以前と比べて演歌歌手の出場枠もかなり減り、NHKとしては地道にこの路線を続けて、課題としている『紅白』への若者層の取り込みを進めていきたいところでは」(テレビ局関係者)

 そのほかの見どころとしては、初出場となる伊藤蘭の「キャンディーズ50周年 紅白SPメドレー」やポケットビスケッツとブラックビスケッツの復活、有吉弘行と藤井フミヤの共演(曲目『白い雲のように』)など。放送終了後は前回(22年)に続き2年連続で司会を務めた橋本環奈、そして初司会となった浜辺美波への絶賛の声がSNS上にあふれた。

 そんな今回の『紅白』だが、視聴率が低迷した理由は何か。裏では昨年の大みそか夜放送の民放テレビ番組視聴率レース1位となった『ザワつく!大晦日 一茂良純ちさ子の会』(テレビ朝日系)の「6時間SP」、『WBC2023 ザ・ファイナル』(TBS系)、『逃走中~お台場リベンジャーズ~』(フジテレビ系)、『笑って年越し!THE 笑晦日』(日本テレビ系)などが放送されたが、テレビ局関係者はいう。

「裏に強い番組がなく、さらに『紅白』の出場者が大きくリニューアルされたこともあり、視聴率アップへの期待もあったが、大みそかの『ザワつく!』が徐々に固定ファンを獲得しつつあり、スポーツ好きは『WBC』に流れた可能性がある。結局、ネット配信サービスやゲームなど余暇をすごす娯楽が多様化し、誰をターゲットにしているのか不明瞭な『ごった煮』の『紅白』を見るという選択肢が浮かばない消費者が増えたということ。これはNHKに責任があるというより、時代の流れとして不可避」

『紅白』の視聴率が歴代最低を更新した背景について、次世代メディア研究所代表の鈴木祐司氏に解説してもらう。

世代別の視聴動向

 原因は複合的だ。まず挙げるべきは社会環境。2020年から22年まで、コロナ禍の影響で年末年始の里帰りや海外旅行をする人はあまりいなかった。初詣や初日の出に出かける人も少なかった。つまり大半の人が大みそかはステイホームとなり、『紅白』の時間帯は在宅起床率が高かった。ところが23年は、新型コロナウイルス感染症が第5類に移行し、リベンジ消費ならぬリベンジ外出がどっと増え、家でテレビを見る人が減った。『紅白』に限らず、HUT(総世帯視聴率)やPUT(総個人視聴率)も大きく落ち込んだはずだ。

 次にジャニーズ事務所問題で、NHKが旧ジャニーズ事務所からの『紅白』出演者をゼロとした点。テレビ視聴率を男女年齢層や特定層別に計測するスイッチメディア「TVAL」によれば、22年の『紅白』を1とすると、23年の個人視聴率は1割減って0.9となった。ところがFT~F2層(女性13~49歳)は個人平均より1~6%目減りした。ジャニーズファンの影響力は小さくなかったのである。ただし旧ジャニーズの出演がゼロとなり、代わりに「アイドル新時代」となったプラスも出た。K-POP、坂道グループ、NiziU、BE:FIRST、JO1など新たなアイドルの出場が増えたことで、MT~M3(男性13~59歳)は個人平均より2~10%視聴者が増えた。学校教育で必修化されダンスが男性にも浸透して来たこともあってか、ダンスのうまいグループの増加が数字にも反映したようだ。

 もう1点特筆すべきは、『紅白』の変化がどうなるのかに注目した層があった点だ。SNSを1日10件以上発信する層が前年より15%増えた点だ。結果として放送中にSNSで『紅白』が話題になることが増えたはずだ。これは大きな追い風だったが、逆に数年前から『紅白』離れを起こしていた高齢者が今回は昨年以上に脱落した。テレビ視聴者の6割以上は中高年で占められる。若者の動向より視聴率全体には大きな影響を及ぼす。65歳以上の単身者は2%減っていたが、寂しさを紛らわす役割を『紅白』はもはや果たしてくれなくなったのである。

 さてコア層(13~49歳)やZ世代(10代半ばから20代後半)も、そうはいっても去年より1割以上減ってしまった。外出以外にこの層はネット動画に逃げた可能性がある。「Snow Man Special Live~みんなと楽しむ大晦日!~」の生配信で、最大同時接続数が133万3063の日本新記録を達成したように、テレビ離れが今回一段と進んだ可能性がある。民放各局による裏番組が今一つ弱かったこともあり、若年層はますますテレビからインターネットへ流れていることも要因の一つとして忘れてはいけない。

 以上を総合すると、大みそかに4時間を超える歌番組はもはや役割を終えつつあると心得るべきだろう。全世代の耳目を集めるネタは今や多くない。ましてや歌だけで押し通すのは限界がある。「昭和は遠くになりにけり」の令和の今、大みそかの新たな国民的番組はどうあるべきか、再考を迫られているといえよう。

(文=Business Journal編集部、協力=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
次世代メディア研究所のHP

Twitter:@ysgenko

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