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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

朝ドラ『まんぷく』は極めて優れたマーケティングの教科書である

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer

 2018年10月から始まったNHK連続テレビ小説『まんぷく』が、3月30日に最終回を迎えた。主人公“福ちゃん”の奮闘を毎朝、楽しみにしていた視聴者もたくさんいたことだろう。このドラマは、日清食品の創業者である安藤百福と妻である仁子の半生に基づいている。

 ドラマの後半は、発売から半世紀を過ぎた現在でも人気の商品であり続けている「チキンラーメン」や「カップヌードル」の開発および発売がストーリーの中心となっている。こうした商品の開発および発売に関わる悪戦苦闘を経ての成功はマーケティングの視点からも大変興味深かった。

マーケティングの基本「4P」

“マーケティングとは何か?”との問いについては、さまざまな見解があるものの、もっとも一般的なものは「顧客を満足させること」であろう。無理やり売りつけるのではなく、顧客に満足してもらうことにより、再購買の促進、さらには好意的なクチコミの拡散などを狙うということである。

 では、顧客を満足させる重要なポイントには何があるだろうか。一般には「4P」がよく指摘される。4Pとは、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)の4つの頭文字を合わせたものである。新たに商品を開発し、発売する際、どうしても商品の機能やデザイン等ばかりに注目してしまうが、それ以外にも顧客を満足させるためには3つの要素が重要であるということである。

チキンラーメンの事例

 ドラマのなかで「まんぷくラーメン」となっていたチキンラーメンは、お湯をかけて3分待つだけで食することができるという、当時の日本においては極めて革新的な商品であった。しかしながら、あまりの革新性に消費者が商品をうまくイメージすることができず、販売は順調に推移しなかった。そこで、テレビのコマーシャルや売り場における試食販売を開始している。これは「販売促進」に該当する。

 また、まんぷくラーメンの成功を見た食品メーカーが粗悪な類似品を低価格で発売し、まんぷくラーメンの売り上げが低下した際には、国立栄養研究所の「健康食品として推奨する」という国からの“お墨付き”を得て大々的にPRすることにより、窮地を乗り切っている。

カップヌードルの事例

 まんぷくラーメンが発売されてから10年余りが過ぎ、即席ラーメン業界は飽和状態に陥り、倒産する企業も現れ始める。まんぷく食品(日清食品)は、この間に数多くの新商品を発売していたが、ヒット商品は出ず停滞していた。そうしたなか、容器に入ったラーメンを開発することに決め、試行錯誤を経て、「まんぷくヌードル」(カップヌードル)が完成する。具材には当時の最新技術であるフリーズドライ製法を用いて、エビや玉子などが採用された。しかしながら、こうしたコストは決して安くはなく、100円という当時では極めて高価格に設定し、発売することになった。

 発売後、まんぷく食品が考えていた「どんぶりなどを用意する必要がなく、屋外でも食することができる」という革新的な利便性は消費者になかなか受け入れられず、取次のスーパーや自社の社員のなかからも「価格を下げるべき」という声が強まる。しかし、社長はまんぷくヌードルの革新的な利便性を強く信じて、値下げを拒否する。スーパーに買いに来る、「主婦」という極めて価格に厳しい顧客層ではなく、商品の利便性を強く求める顧客を探して自社で直接販売することに決める。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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