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工藤貴宏「幸せになるためのクルマ選び」

三菱「パジェロ」のジレンマ…12年超モデルチェンジなしの理由、トヨタ「ランクル」との違い

文=工藤貴宏/モータージャーナリスト

 現在、パジェロの大きなマーケットは中東地域などである。そこでパジェロが好まれる理由は「丈夫で悪路走破性の高いクルマがリーズナブルに買える」から。長くつくり続けたことで開発などにかかった減価償却が済み、トヨタ自動車「ランドクルーザー」などに比べて手の届きやすい価格で売られているのだ。言い換えれば「性能が良く安いのでコストパフォーマンスに優れる」ということで、ランドクルーザーとは異なるユーザー層に愛されているといえる。

 一方で、三菱自動車としては、新型パジェロを開発するのであれば「三菱のフラッグシップモデルとして世界最高水準の悪路走破性を備えた究極のオフローダーにしたい」と考えている。しかし、それを実現するクルマにつくり上げると車体にコストがかかり、今のような価格では販売できなくなってしまう。それはすなわち、中東などでの現在の「コスパに優れた本格オフローダー」というポジションを失ってしまうことを意味しているのだ。それが、パジェロが抱えるジレンマである。

 現実と理想のズレが解消されないと、次期パジェロの開発にゴーサインは出ないのだ。実は、現行パジェロが12年以上も売り続けられている間に新型パジェロの開発プランが数回浮上したという。しかし、このジレンマにより開発が進むことはなかったのが現実だ。

次期パジェロ開発のカギは日産との連携か

 ところで、昨今ニュースをにぎわせているように、三菱自動車は日産自動車の傘下に入っている。筆者は、ここに次期パジェロ開発の糸口があるように思える。提携している会社同士が車両のメカニズムを共用するのは一般的な話(たとえば、ルノーと日産では車体の基本設計を共用するクルマも少なくない)なので、日産の本格四輪駆動車とパジェロの車体の基本構造を共通設計とする方法だ。

 現在の日産車をベースにするのはさすがに無理があるので、日産の次期モデルを開発する際にパジェロの要件も盛り込んで、それを活用し新型パジェロの開発プロジェクトを進める方法をとるべきではないだろうか。

 いつの日か、市場のニーズと三菱自動車の理想を両立する新型パジェロがデビューすることを願わずにはいられない。
(文=工藤貴宏/モータージャーナリスト)

工藤貴宏/モータージャーナリスト

工藤貴宏/モータージャーナリスト

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆中。心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。
執筆媒体はモーターファン別冊新車速報シリーズ(使い勝手チェック及びバイヤーズガイド担当)、ガルヴィ(新車紹介記事担当)、カーグッズマガジン、RESPONSE、&GP、goo-net.com、gazoo.com、くるまのニュース、clicccarなど。国産車を中心に新車から中古車まで幅広く原稿を手掛ける。
本当はスポーツカーが好きだけど、ミニバンや軽自動車も得意。
現在の愛車は10年乗ったポルシェ・ボクスターSから乗り換えたルノー・ルーテシアR.S.とマツダ・プレマシー。

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