なぜそれでも、自社登録を積極化してまでも販売ランキングトップになりたいのかといえば、それが販売現場において効果的なセールスツールとなり、ノートであれば「登録車で一番売れているクルマですよ」とお客に説明することができるからである。日本の消費者のクルマへの興味が薄れているなかでは、難しいメカニズムの話での優位性などより、わかりやすいセールストークとして、販売促進にはもっとも効果的なのである。
今のところ、登録車では日産並みに自社登録を積極的に行うメーカーがいないので、軽自動車ほど自社登録(軽自動車は届け出)がメーカー間で恒常的に行われてはいない。自社登録で問題なのは、無駄にともいえるほど中古車市場に流通することで、そのクルマのリセールバリューを下げることにつながることだ。そのため、個人所有している顧客の所有車の価値すら下げてしまうことにもなりかねないのである。
今年は秋に東京モーターショーが開催されるが、モーターショー開催年であるにもかかわらず、日産は3月末に軽自動車デイズの新型をリリースして以降は、国内市場では新型車のリリース予定はないようである。トヨタ、ホンダと並び“日系ビッグ3”とも呼ばれているのだから、もう少しバランスの良い販売体制に努めてもらわなければ、日本市場のガラパゴス化を加速させてしまう。
日本はもはや“エコカー先進国”を名乗れない?
今回、上海ショーの会場を見て歩くと、日本車の世界市場でのトレンドへの乗り遅れ状態がますます顕在化してきており、中国の消費者のなかからは「日本車はトレンドに乗り遅れている」とか「古臭い」といった見方をする人が増えているとも聞く。
かつて日本は“エコカー先進国”とも呼ばれていたが、路線バスはディーゼル、タクシーはLPガス車ばかり。BEV(バッテリーエレクトリックビークル)の普及では完全に出遅れ、HEV(ハイブリッド車)は多いが、そのHEVも欧州や中国では48ボルト対応のMHEV(マイルドハイブリッド)がトレンドとなっており、PHEVも数えるほどしかラインナップされていない。この状況では、もはやエコカー先進国なんて恥ずかしくて言えない状況になっているといえよう。
日本車全体の世界市場での地盤沈下傾向の一因として、母国市場である日本市場がガラパゴス化してしまい、そのせいもあり、日本にある各メーカーのヘッドクォーターの判断力が鈍っているのではないか、という指摘も聞いたことがある。
やはり、日系ビッグ3の一翼を担う日産には、売れるモデルだけ必死に売るのではなく、もう少し腰を据えて日本市場を見つめ直してほしいと筆者は考えている。
(文=小林敦志/フリー編集記者)