デベロッパーに変身
大和ハウスの19年3月期の連結決算は、合弁会社の資金不正流用で125億円の営業外費用を計上したため、純利益は18年同期に比べ微増の2374億円にとどまった。
一方で、本業は好調だ。売上高は同期比9.2%増の4兆1435億円、営業利益は同7.2%増の3721億円と増収増益。ホテル建設が好調だったほか、インターネット通販向けの物流施設の建設が寄与した。
19年3月期の事業別の業績は、戸建住宅が売上高3838億円、営業利益199億円。創業事業である戸建住宅は、もはや主力ではない。取って代わったのが、賃貸住宅、商業施設、事業施設の3事業だ。
賃貸住宅は売上高1兆613億円、営業利益1022億円。ショッピングセンターなどの商業施設は売上高6939億円、営業利益1377億円。物流倉庫や工場、オフィスビルなどの事業施設は売上高1兆223億円、営業利益989億円だ。なかでも、事業施設は18年3月期に比べて1721億円の増収、営業利益は100億円の増益。東京五輪に向け、空前の大型オフィスビルラッシュの賜物だ。
大和ハウスはハウスメーカーから、街や土地を開発するデベロッパーへ変身している。この転換を主導したのが、樋口氏である。芳井氏は「樋口路線を引き継ぐ」と言っているが、“中興の祖”が経営の第一線から退くのを機に、拡大路線を軌道修正することになる可能性もある。
外部調査委の中間報告で「設計者、違法性を認識」
大和ハウスは5月31日、不適切な建築の問題で、外部調査委員会から中間報告を受けたと発表した。
調査委は、一部の設計責任者が違法性を認識していたことを指摘した。同委は6月中に再発防止策を含む最終報告書をまとめる。
国の指定を取得していない柱や基礎を使っていた一因を「設計責任者が認定を取得していると誤認した可能性がある」とした。アパート屋外の2階廊下を支える柱は、「関東の設計者の多くが、本来の手続きに違反して建築確認申請をしていたことを認識していた」という。
調査委は、違反を是正できなかった理由の調査を進めるとしている。大和ハウスは相次ぐ不祥事を受け、全社的な企業統治(ガバナンス)強化策を秋にも策定し、公表する。
6月3日、樋口氏、芳井氏ら16人の取締役について、19年3月期の業績に応じた賞与を20%減額すると明らかにした。12人いる執行役員の賞与も10%削減する。6月25日の株主総会で議案として示し、承認を経て正式決定する。
不祥事の検証結果次第で、追加処分も検討する。
(文=編集部)
【続報】
6月18日、国の認定を取得していない基礎を使った賃貸アパートや戸建て住宅が、新たに1885棟見つかったと発表した、違反物件はこれまでに明らかにした数から倍増し、約4000棟となった。対象となる世帯は7000世帯から1万2000世帯に増えた。ずさんな管理体制が明らかになったわけだ。ブランド力の低下は避けられない。
芳井敬一社長が記者会見し、「申し訳ない。システムの不備とはいえ、精査が行き届かなった」と陳謝した。意図的な隠蔽は否定したが、社内のコミュニケーション不足が問題の一因と指摘されている。
法令順守や品質保証を推進する「法令順守・品質保証推進本部」(仮称)を社長直轄の部署として10月にも設置する。新たな社員教育制度を立ち上げる。