日夜その人気を競い合っている大手寿司チェーン店たち。低価格で豊富な種類の寿司が楽しめると人気だが、消費者目線ではどこも美味しそうで、各チェーン店ごとにどんな味の違いがあるのか、イマイチ掴みきれないという人も多いことだろう。
そこで今回は、人気寿司チェーン店の「スシロー」「くら寿司」「かっぱ寿司」「はま寿司」の寿司を食べ比べ。「変わり種編」として、チェーン店ごとに“共通の変わり種メニュー”と、“オリジナリティの出た変わり種メニュー”を1品ずつ選出して比較したので、お店選びの参考にしていただければ幸いである。
総評で優勝チェーン店も決めているので、ぜひ最後までお読みいただきたい。
スシロー
まず紹介するのは、株式会社あきんどスシローが運営するブランド・スシローだ。1975年に前身となる立ち食い寿司屋「鯛すし」が誕生して以来、47年もの月日を歩んできたスシローは、直近のデータで国内600店舗以上も構える人気チェーン店となっている。
【えびチーズ/110円(税込、以下同)】
今回、4チェーン店で“共通の変わり種メニュー”として選んだのは、“エビマヨ・チーズ系”の寿司。庶民派チェーン店だからこそ味わえるこうしたネタは、意外にもあと引く美味しさで人気となっている。スシローからは、110円で味わえる「えびチーズ」をピックアップした。
茹でエビにスライスチーズを乗せ、その上からマヨネーズをかけて炙った、コクと香ばしさが印象的なこの一皿。マヨネーズの酸味は抑えめで、エビやチーズの風味も感じられるバランスの良さが特徴的である。まるでシーフードドリアを食べているような感覚だった。
【サーモンバジルモッツァレラ/165円】
スシローの“オリジナリティの出た変わり種メニュー”として選んだのは、165円で味わえる「サーモンバジルモッツァレラ」。もはやイタリア料理のような響きのメニューだが、果たしてどんな仕上がりなのか。
食べてみると、まずバジルの香りとオリーブオイルベースのドレッシングが感じられた。柔らかなサーモンとミルキーなモッツァレラチーズが混ざると、まるでマリネのよう。マリネにおける酸味を酢飯が担うことで、イタリアンと和食が自然に融合したかのような味わいになっていた。
くら寿司
次のチェーン店は、くら寿司だ。1977年に大阪の堺市で誕生したこのチェーン店。食べ終わったお皿を硬貨代わりにガチャガチャが楽しめる「ビッくらポン!」システムを導入するなど、常に遊び心を忘れない姿勢が受けたのか、直近のデータで国内約500店舗を展開するに至っている。
【【炙りたて】Wチーズえびマヨ/220円】
くら寿司のエビマヨ・チーズ系メニューである「【炙りたて】Wチーズえびマヨ」は、スシローよりも強気の価格設定。一体、どんな味と特徴があるのだろうか。
まず目に入るのは、並べた2貫のエビをまたぐように乗った、大きめのスライスチーズ。だが、この贅沢なチーズの使い方が正直なところ、食べづらく感じた。箸で切り離そうとすると、ネタ全体がずり落ちてしまうのだ。マヨネーズはチーズの下にかかっているタイプ。エビは小さく、海鮮を味わうというよりも、チーズドリアのような感覚でチーズのパンチを味わうものととらえるのがいいだろう。
【ベジロール(サーモン)/220円】
くら寿司の遊び心が出た変わり種メニューとして今回チョイスしたのが、220円の「ベジロール(サーモン)」。本品は、薄くスライスしたにんじんでサーモンの握りを巻いてしまうという、見た目のインパクトが大。その味も気になるところだ。
主役として、サーモンと上に乗ったいくらのうまみがきちんと感じられるバランスは見事。にんじんのフレッシュな野菜のテイストと浮かないように、クリームチーズとアボカドがさりげなく入っているのもニクい。重たさを感じさせない工夫が光る一皿だった。
かっぱ寿司
次のチェーン店は、キャッチーなCMソングでその名を覚えた人も多いであろうかっぱ寿司。カッパ・クリエイト株式会社が運営する同チェーン店は1983年生まれで、直近のデータで国内約300店舗を有し、こだわりの食材選びで人気を獲得している。一方で、競合のはま寿司の情報を不正取得したとして9月30日に、不正競争防止法違反の疑いで社長が逮捕されるというショッキングな話題で関心を高めた。
【オニオンえびマヨ/110円】
かっぱ寿司の“エビマヨ・チーズ系”メニューは、他のチェーン店とは一味違う。なんと公式サイトのジャンルで「チーズ・マヨ」と記載しているにもかかわらず、チーズが乗っていないのだ。代わりに乗るのは、たっぷりのスライスオニオン。そのため今回は110円の「オニオンえびマヨ」をチョイスした。
シャキシャキ食感のオニオンと、マヨネーズのハーモニーはサラダのような印象。正直、オニオンの量がかなり多いので、エビの風味はあまり感じられない。だが、重たくなりがちなマヨネーズ系メニューでありながら、非常にさっぱりといただけるので、こういう変わり種に慣れていない人にこそ試してもらいたい一皿といえるだろう。
【真いか ザク旨ラー油/110円】
かっぱ寿司でオリジナリティの高い変わり種として今回選出したのが、110円の「真いか ザク旨ラー油」。お寿司に、いわゆる“食べるラー油”をかけた斬新なアイディアが光る一品だ。一体どんな味のバランスになっているのか、さっそく食べてみた。
口に入れて最初に感じたのは、ザクザクとしたニンニクチップの歯ごたえと、食欲を刺激する香ばしさだ。そこに真イカのもっちりとした噛み応えと旨味が見事にマッチしており、非常に美味。ただ、ラー油の辛味はほぼないので、ピリッとした刺激を求めていると、少々物足りなく感じるかもしれない。
はま寿司
最後に紹介する寿司チェーン店は、はま寿司だ。同チェーン店は、牛丼チェーン店の「すき家」を運営する株式会社ゼンショーホールディングスが、2001年に世に送り出した100円回転寿司。後発ながら異なる飲食業界で培ったノウハウを生かし、直近のデータで国内550店舗以上を展開している。
【炙りえびチーズ/110円】
はま寿司のエビマヨ・チーズ系商品の見た目は、スシローにも通じるところのあるオーソドックスなスタイルで、こちらも110円というコストパフォーマンスの良さが特徴。
チーズのサイズは小さめだが、かなり香りの強いものを使っているのでインパクトは十分。マヨネーズの酸味は強めで、炙った焦げの風味も力強く、そのジャンクな美味しさが魅力である。エビの風味は弱めなので、チーズをメインに味わったほうがいいだろう。
【炙りしめさば おろし盛り/165円】
はま寿司の個性が出た変わり種メニューとして選んだのは、165円の「炙りしめさば おろし盛り」。お寿司に大根おろしを乗せるという大胆な発想は、どんな効果をもたらしているのか。
大根おろしのフレッシュさで酢飯を食べる新たな感覚は、クセになる爽やかさ。しかし、しめさばにあまり脂が乗ってない印象で、大根おろしの圧倒的な爽やかさにかき消されている気がした。だが、その爽やかさは確かなので、箸休め的に注文するといいかもしれない。
総評…優勝はかっぱ寿司
ここからは総評を行っていこう。
“えびマヨ・チーズ系メニュー”でいうと、スシローの「えびチーズ」とはま寿司の「炙りえびチーズ」は、ほぼ同点といえるクオリティーだった。価格も110円と同じで、ジャンキーでパンチのある味わいはクセになる人も多いことだろう。
くら寿司の「【炙りたて】Wチーズえびマヨ」に関しては、正直なところ他チェーン店の倍額(220円)を払うだけのクオリティーが伴っているかと言うと、疑問が残る。確かに大きなチーズを使っているが、それが食べやすさや美味しさに必ずしもつながっておらず、雑な印象を受けたのは否めない。110円で提供しているかっぱ寿司の「オニオンえびマヨ」は、各素材の品質は4チェーン店でもトップだと感じたが、オニオンの量が多すぎたのは気になった。
次に“オリジナリティの出た変わり種メニュー”について。165円で提供しているスシローの「サーモンバジルモッツァレラ」は、目指すべき味のゴールを見据えており、表現しようとしている味がしっかりと伝わってきたのが好印象だった。220円で提供しているくら寿司の「ベジロール(サーモン)」は、見た目の突飛さとは裏腹に非常に計算された味わいで、味が複雑ではあるが美味しく食べられた。
110円で提供しているかっぱ寿司の「真いか ザク旨ラー油」は、まずネタの鮮度が非常に良い。食べるラー油という驚きの味付けでありながら、全体のバランスをしっかり計算して作られており、感心させられた。165円で提供しているはま寿司の「炙りしめさば おろし盛り」に関しては、“しめさばの脂を大根おろしでさっぱり食べる”ということがやりたいのはわかるのだが、肝心のしめさばが脂不足で、この試みの実現には至っていないと感じた。
ということで、今回の優勝を選ぶなら、かっぱ寿司になるだろう。スシローやくら寿司のオリジナリティの高いメニューもよかったのだが、素材の鮮度や味のバランス感覚の安定感という点でいうと、かっぱ寿司に軍配をあげたい。
一口に回転寿司チェーン店と言っても、実際に食べ比べてみるとチェーン店ごとの個性が際立って見えた。この記事を参考に、お好みのチェーン店を見つけてもらえば幸いだ。
※メニュー情報は2022年9月17日現在のものです。