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垣田達哉「もうダマされない」

シャウエッセン離れの深刻な理由…「豊潤」との栄養成分・原材料の比較でみえる真実

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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シャウエッセン(サイト「アマゾン」より)

 10月31日配信の朝日新聞デジタル記事によると、日本ハムが値上げの逆風に苦しんでいると次のように伝えている。

シャウエッセンは2月に7%値上げした。さらに10月出荷分からは、1袋あたりの本数は6本に据え置いたまま、内容量を127グラムから117グラムに減らして『実質値上げ』した。

 ハム・ソーセージの全体の販売数量はあまり変わらないが、値上げ後4月のシャウエッセンの売上高は、1月の8割近くまで下がった。その後の回復も遅い。一方、シャウエッセンより低価格帯の『豊潤』の売上高は伸びており、消費者の価格に対するシビアな感情がうかがえる」

 では、どうしてシャウエッセンの購買客が戻らないのだろうか。要因は価格だけではないと筆者は感じている。

 シャウエッセンと豊潤の栄養成分と原材料を比較してみよう。栄養成分を比較すると、豊潤はシャウエッセンより、たんぱく質は少ないが脂質が多いのでカロリー(熱量)は多くなっている。品質的には、脂質が少なくたんぱく質が多いほうが良いかもしれないが、満腹度はカロリーが高いほど大きくなる。わずかな差だが、敏感な消費者であればシャウエッセンのほうが物足りなさを感じるかもしれない。

 塩分(食塩相当量)も豊潤のほうがわずかに多い。健康面からは、塩分が少ないほうが良いが、塩分は味に直結する。豊潤のほうがおいしいと感じる消費者もいるだろう。

 次に、原材料を比較してみよう。豊潤に使用されているが、シャウエッセンには使用されていない原材料は、添加物以外では粉末はちみつ。添加物では、加工デンプンとpH調整剤である。主原料である豚肉の産地(原料原産地)は、どちらも「アメリカ、チリ、メキシコ、日本」なので産地の使用割合はわからないが、豚肉そのものの品質に差はないだろう。

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 では、添加物はどうか。加工デンプンはグループ名であり、表示だけでは具体的にどんな物質が使用されているかわからない。加工デンプンのなかには、発がん性が心配されるものもあるので、使用されていないシャウエッセンのほうがお勧めである。pH調整剤もできれば食べたくない添加物なので、添加物だけで比較するとシャウエッセンのほうが良い。

 一方、豊潤に使用されている粉末はちみつは、味付け(甘さ)というよりは保水性の効果があるので使用されているのかもしれない。いずれにしても、本来ソーセージに必要のないものを使用しているので、品質的にはシャウエッセンよりやや劣るといえる。

情報でおいしいと感じている

 こうして比較をすると、目に見えない品質的な差はあるが、原材料そのものの差はあまりないように見える。仮に、豚肉の使用量が、豊潤よりシャウエッセンのほうが少しばかり多かったとしても、消費者が違いを感じるほどの量ではないだろう。

 結局「値段が高いものがおいしい」とか「高級ブランド品だから上質だ」と思ってシャウエッセンを購入していた消費者が、物価高騰を受けて使用頻度の多いソーセージの購入価格を節約するために低価格の豊潤を選んでみると「意外とおいしい」「シャウエッセンと変わらない」と感じた人が多いから、シャウエッセンに戻らないのではないだろうか。

 人は、耳や目で美味しいとか品質が良いと感じるところがある。目隠しして食べると、その差がわからないというのは「情報でおいしいと感じている証拠」なのだ。筆者は「食は浮気することも必要だ」と講演などで訴えている。そこには新しい発見がきっとあるからだ。前のほうが良かったと思えば戻ればいいだけのことだ。シャウエッセンから豊潤に移った消費者は、なかなか戻っては来ない気がする。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

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※原材料表示の中で「/」より前が、添加物以外の原材料。「/」以降が添加物。詳細は、2017年7月11日掲載の「食品会社がひた隠しにしたい『情報』・・・包装ラベルから一発で見抜く方法」を参照

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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