合成保存料、合成着色料、合成甘味料を私は「嫌われ者添加物三兄弟」と呼んでいます。微生物が増殖して腐敗、変質するのを防ぐための添加物のことで、「防腐剤」ともいわれています。保存料の話をする前に、微生物について少しお話ししておきましょう。
微生物の種類(分類)は以下の通りです。
・真菌:カビ、酵母(イースト)
・細菌(バクテリア):大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、枯草菌など
・ウイルス(ビールス):食品の腐敗に関係することはありませんが、ノロウイルスのように食中毒を起こすものがあります
微生物が増殖するには、水分と栄養が必要です。微生物は冷蔵庫内でも増殖します。冷凍した場合は増殖しませんが、死滅することはありません。冷凍庫から出して放置しておくと増殖しますから注意してください。また、かまぼこ、食パン程度の水分があれば微生物は増殖します。ビスケット、せんべいぐらいの水分であれば微生物の増殖はありません。
食品が微生物で腐敗するのを遅らせることができれば、流通範囲が拡大します。また、賞味期限が長く設定できますから期限切れによる廃棄が少なくなります。だからといって、合成保存料を積極的に使用すればよいというわけではありません。合成保存料に限らず、添加物の「人」に対する安全性は検討されておらず、複数の添加物を摂取した場合の安全性はラットですら検討されていません。
合成保存料の表示
いわゆる用途名併記が義務付けられています。
<表示例>
保存料(ソルビン酸K)
保存料が用途名、ソルビン酸Kが添加物名です。Kはカリウム。このように用途名と添加物名を併せて表示することを用途名併記といいます。あなたが注意して表示を確認すれば、合成保存料の摂取は防げるのです。
ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウムは合成保存料として有名です。真菌(カビ、酵母)には有効ですが、細菌(バクテリア)に対しては効果が弱いです。非常によく使用されている添加物で、共役二重結合という非常に化学反応を起しやすい分子構造をしています。
ソルビン酸ナトリウムは化学的に不安定で変化しやすいため、添加物として認められていません。化学変化しやすい添加物です。例えば胃内で亜硝酸と結合して別の物質に変化しますし、酸素により別の物質に変わりやすいです。
食品中でどのような物質に変化するのか、また変化してできた物質はどのようなものか、その安全性はどうなのかなどの検討が急がれます。ソルビン酸は気味の悪い添加物です。
<使用されている食品の例>
かまぼこ、さつま揚げ、竹輪などの水産練り製品、ハム、ソーセージ、ウインナーなどの食肉製品、みそ、チーズ、マーガリン、煮豆、餡(あん)類、魚介乾製品、佃煮、漬物、煮豆類
<使用基準>
3000ppmが最高(食品1000g当たり3g)
あまりにも有名なので、ソルビン酸という表示があると消費者が購入を控えるようになりました。最近では使用している食品が少し減少してきたように感じております。
(文=小薮浩二郎/食品メーカー顧問)