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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

在宅勤務の弊害を解消…日本生命「コミュニケーション4」が注目される理由

文=鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
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日本生命 人材開発部 輝き推進室室長の宇田優香さん

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、リモートワークが社会に急速に広がり、定着したといっても過言ではありません。企業からすれば経費の削減、離職率の低下など、社員にとっては通勤時間や負担の軽減、子育てや介護などワークライフバランスの実現といったように双方にメリットがあることも定着の要因かもしれません。ただ、一方ではコミュニケーションを築きにくい、評価を結果だけに頼りがちになるなどのデメリットもあります。

 そんなデメリットの解消の手がかりになると注目されているのが、日本生命が独自で開発した「コミュニケーション4」です。そこで今回は、同社人材開発部 輝き推進室室長の宇田優香さんに話を聞きました(以下、敬称略)。

縦・横・斜めのつながりを強化

――「コミュニケーション4」の運営事務局が「輝き推進室」とのことですが、どのような業務をされていますか。

宇田 人財価値向上プロジェクトを掲げ、全社員一人ひとりがより輝けるようにと創設された部署です。「人財育成」を経営基盤の一つとして位置付け、「人財価値向上プロジェクト」という、社長の清水博が座長である全社プロジェクトを通じ、多様な人材の多彩な活躍を推進しています。当社は創業130年以上になりますが、創業以来大切にしてきた精神が、共存共栄、相互扶助です。これらの強固な事業基盤となるのが“人”です。

 さらに、お客さまと社会の未来を支え続けるためには、「一人ひとりが誇るべき“個”有の強みを持ち、生涯にわたり活躍する“逞しい人財”に成る」ことを目指すべき姿だと位置づけています。「輝き推進室」はこの一環として立ち上げられた部署なんです。

――具体的にどんなことをされていますか。

宇田 大きくあげると3点あります。1点目は全社的課題に対するダイバーシティの企画・立案、2点目はD&I(ダイバーシティ&インクルージョンの略語。職場で課題や悩みや意見を発信しやすく、職場の風通しを良くするための取り組み)推進のPDCAサイクルの構築および事業部門との連携、3点目はD&I推進の浸透・風土醸成、環境・ルールの整備をしています。今回の「コミュニケーション4」も人材価値向上の一環として、当部署が担当しています。

――「コミュニケーション4」のきっかけは、コロナ禍だったとか。

宇田 はい。コロナ禍で在宅勤務などの新しい働き方の推進や価値観の多様化が進む一方で、大人数での集合機会の減少や働き方が変化したことなどにより、職場内のコミュニケーションの質・量が変化するなどの課題が顕在化しました。具体的な課題としては、上司と部下との縦のコミュニケーションに加え、組織としての横・斜めのつながりが希薄になっていることが、組織風土の低下につながっていると認識しました。

 もちろん、個々人や部署でも努力を続けていましたが、大切なことは多様な人材が多彩に活躍し、組織の力につなげていくことにあります。そのためには、個々人の相互理解を深め、縦・横・斜めのつながりを強化することが重要だとの考えに至りました。2021年度より、新たなコミュニケーションの仕組みとして新設したのが「コミュニケーション4」です。

――「コミュニケーション4」は、実際にどんなことをされるのですか。

宇田 「コミュニケーション4」は、各職場で上司あるいは先輩と部下を組み合わせて4人で1チームをつくることから名付けられたものです。4人一組にしたのは、オンラインで一つの画面に映る適切な人数であることや、コロナ禍で社員を守る観点からガイドラインを遵守する人数であることなどから決定しました。実施は業務時間内に年に5回以上、1回30分間を推進しています。テーマに沿って意見を交わします。

――テーマには、どんなものがあるのですか。

宇田 事務局がさまざまな価値感を共有できるテーマを考えて提供しています。たとえば、お互いのエピソードから人となりを知る「エピソードトーク」や、「マナー」「健康増進」「SDGs」「仕事と介護・育児・病気治療などを両立できる職場について考える」などです。またチーム独自で考えるテーマもOKとして、「業務で困っていることをざっくばらんに共有する」「職場内の働き方変革」などの意見を出し合っています。今年度は「理念浸透月間」として、座長の清水によるメッセージを全職員が視聴の上で、「お客さまのために何ができるか」「お客さま本位の業務とは何か」をテーマとして取組みました。

役職や年次もバラバラ

――他に見られない取り組みですので、すべて一から決めていかれたと思います。スタートにこぎ着けるまでのご苦労とかはありましたか。

宇田 一時的なものではなく、継続して実施できる取り組みと位置づけました。業務時間内で開催することを決めていましたので、負荷にならない範囲で、かつ全員が参加できるように仕組み化を図ることに努めました。輝き推進室内で1カ月かけて意見を出しながら固めていきましたが、健康やSDGsのテーマを取り扱うときは、社内の専門部署にアドバイスをもらった上で、輝き推進室内で試験運用をし、分かりにくさなど検証して、改善していきました。開催時の混乱を避け、スムーズな実施のために、明確な運営マニュアルを定め、開催方法や話し合うテーマも分かりやすくパッケージ化しました。

――運営マニュアルにはどういったことを?

宇田 最初に企画意図やルールを説明すること、必ず全員が一人1分程度話すこと、積極的に質問をすること、否定をしたり、価値感の否定は厳禁であること、最後に気付きを各人が発表することなどです。何より、あくまでも穏やかで話しやすい雰囲気作りを全員が心掛けることはいうまでもありません。

――上司や先輩と部下の組み合わせというのは、緊張するというか、本音で話し合えるものですか?

宇田 最初は多少なりとも緊張した部分はあるとは思います。開催時に「コロナ禍に『コミュニケーション4』を通して、お互いの人となりや価値観を知り、認め合うことで、仕事の円滑化や新しいアイディアの創出、働きがいの向上といった、かっ達な職場風土の実現による相乗効果を生み出すことを目的とする」との企画の意図を、時間を設けてしっかりと伝えることになっています。また、「コミュニケーション4」は従業員間のコミュニケーション促進を目的としていますが、ベースとしてあるのは、企業の強固な事業基盤は人であるという認識をもとに、社長と若手従業員との意見交換の場を、2015年度から「みらい会議」として実施しています。

――みらい会議のメンバーはどうやって決めていたのですか。

宇田 社内から希望者を募って開催しています。清水は、人対人として臨むというスタンスに徹しています。このため若手社員は「休日は何をして過ごしていますか?」「趣味は?」など、普通じゃ聞けないプライベートのことも聞いているようです。参加者からは、「和やかな雰囲気の中で社長が丁寧に話してくれて、人となりにふれることができた。仕事へのモチベーションが高まった」との感想が寄せられています。

 なお、2022年度は取り組みに加え、各部門の担当役員と若手職員による“部門版”みらい会議や、当社経営層に加え社外講師等を招き、全層を対象とした“拡大版”みらい会議を新設しました。

――「コミュニケーション4」には、そういったバックボーンがあったのですね。「コミュニケーション4」はメンバーの選定もポイントになるように思いますが、組み合わせはどのように?

宇田 チーム編成は各職場のリーダーに任せましたが、これも職場内で普段あまり接点のないメンバー同士が話せるようにとの理由によるものです。職場では所属長をリーダーに選任していますが、同じグループで可能な限り役職や年次などが、バラバラとなり、多様な価値観を得られるような運営を事務局が推奨していますので、リーダーは工夫してくれているようです。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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