大手ハンバーガーチェーン「マクドナルド」のハンバーガーにゴキブリが混入し、店側が当該客に謝罪と返金を行い、保健所に届け出をして混入経路などを調査中であることがわかった。昨年12月には「マックフライポテト」の箱のなかに人の爪が混入するという事案も起きており、マクドナルドでは2014年~15年に相次いで起きた期限切れ鶏肉使用事件や異物混入事件で業績が悪化した過去があるだけに、懸念が広がっている。
マクドナルドの業績は好調だ。運営会社・日本マクドナルドホールディングス(HD)の2022年12月期の売上高は前年比10.9%増の3523億円、営業利益は過去最高益を記録した前年から2.1%減となったもののほぼ同水準の338億円。原材料費やエネルギー価格の高騰を受けて先月には一律値上げを実施したが、目立った客離れなどは起きていない模様。
そんなマクドナルドに新たな懸念材料が浮上。今月12日、ユーチューバー「ナパーズ」のトモヤ氏が店舗で購入したハンバーガーにゴキブリが混入していたとTwitterに投稿。「J-CASTニュース」の取材に対しマクドナルドは、当該店とみられる店舗で客から報告を受けて謝罪と返金対応を行い混入経路を調査中であることを認めている。また、昨年12月には「マックフライポテト」に人の爪とみられるものが混入していたことが発覚。店側は当該客に謝罪したうえで現物を回収し混入経路を調査したものの、経路の特定には至らなかった。
マクドナルドといえば、2014年に「チキンマックナゲット」の材料の仕入れ先だった中国の工場で期限切れ鶏肉を使用していたことが発覚し、一時は販売を停止するという事案が発覚。さらに翌15年には商品に破損した調理機器の部品が混入するなどの異物混入がたて続けに起こり、深刻な客離れが発生。日本マクドナルドHDの14~15年12月期連結決算の最終損益は2期連続の赤字、15年12月期は上場来最大の赤字を記録するなど業績悪化に見舞われた。
「当時のサラ・カサノバ社長の謝罪会見が消費者の反感を呼び逆効果になるなど広報対応のまずさもあり、さらに騒動の前から客離れが始まっていたこともあり、復活が難しいという見方が強かったが、16年12月期には黒字に転換しV字回復を遂げた。不採算店の大量閉店や店舗改装を一気に進め、製造工程や品質管理への取り組みが消費者から見えるよう徹底的な透明化を図ったことが奏功した。今また不祥事が続き、8年前の悪夢が再来してしまわないかが懸念されている」(外食業界関係者)
過去の不祥事を教訓に万全の品質管理体制を維持しているようにみえたマクドナルドで、なぜ再び問題が続いているのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に解説してもらった。
混入を100%防ぐのは困難
なぜゴキブリの混入が起きるのか。厨房(キッチン)と販売カウンター、客席、屋外は、仕切られていたり扉があったとしても、空間としてはつながっており、扉の開け閉めによって接触が避けられない造りとなっています。つまり、どんなに注意を払っていても、外部からの虫などの侵入を100%遮断することは困難であり、調理の途中でふと目を離した隙に虫が異物として混入してしまう可能性が残されてしまいます。毎日長時間調理をしている店舗では、どれほど管理を徹底しても100%大丈夫とは言い切れません。
飲食店で大きなゴキブリを見かけることがありますが、これは店舗が不衛生というよりも、多くは店外のゴミ捨て場や公園の草むらなどに生息する外部のゴキブリが、飲食店の食べ物の匂いにひかれて迷いこんでしまったケースが多いと思います。路面1階の店舗だと、扉の開け閉めのタイミングで隙間から侵入してくるので、店側からすると本当に迷惑なことです。
ただ、小さな茶色いゴキブリ、通称チャバネは、お店に住み着いていることが多く、これを何回か見かけたら、お店の責任だと思ってもいいでしょう。チャバネは、製氷機、洗浄機、冷蔵庫などのモーター付近の温かいところを中心に生息していて、放っておいても減ることはまずありません。駆除業者に依頼して退治するのが通常で、マクドナルドのような大手チェーンは定期的に駆除業者を入れているので、今回の事件は「外部から侵入した虫」だと考えられます。
さらに通常の飲食店よりも保健所の許可が厳しくなる「食品の製造販売」では、製造場所は作業区分に応じて区画されたり、作業場外に原料倉庫を設けたり、極力外部と遮断された空間を求められます(取り扱う食品の種類や保健所によって判断基準は若干異なります)。床から天井まで壁を設置して外部と遮断された空間で調理していれば虫の侵入はなさそうですが、人の出入りがある扉の開閉がある以上、100%の遮断・隔離は困難で、外部から材料(段ボールや容器関連)を運び込む際に虫がついている可能性も0%ではありません。
マクドナルドのような大手チェーンは、虫の混入は企業イメージのダウンとなり痛手になることは十分に認識しており、相当な注意を払って対策をしているはずですが、確率的に100%大丈夫とはいえないため、今後もこのようなことは起こり得ると考えられます。もちろん、衛生管理や定期的な害虫駆除、外部空間との接触面の最小化(極力隙間をつくらない)、扉の開閉時間の短縮、調理空間までの間に距離を置くなど、可能な限りの対策は必要となりますが、店舗の造りや広さによっても限界があるのが実情です。
(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)