3月4日に生放送で決勝が行われた、吉本興業主催のピン芸人コンクール『R-1グランプリ2023』(フジテレビ系)が揺れている。
事の発端は、ファーストラウンドトップバッター・「Yes!アキト」の得点結果発表時に、「Yes!アキト 456点」とモニターへ表示されるべきとろで、なぜか「田津原理音 470点」の文字が映し出された。時間にして1秒弱。その際にはネット上でも大きな話題にはなっていなかった。単なる機械の不具合程度にしか思われなかっただろう。
だが、7人目として登場した田津原がネタを披露し終え、得点が発表されると一部の視聴者が疑問を投げ始めた。なぜなら、田津原の得点が、先に掲出されたものと同じ「470点」だったからだ。
田津原は最高得点でファーストラウンドを突破し、ファイナルラウンドでも優勝を飾った。すると、最初の“誤表示”が物議を醸すことになる。実は最初から順位や得点まで決まっていたのではないか、との声が噴出しだしたのだ。
ネット上での声が大きくなり、2日後の6日になって番組側は公式ツイッターに事情説明を掲出。
「3/4(土)19時放送『R-1グランプリ2023』の審査得点発表の際、リハーサル時に入力した仮のデータが制作側の不手際により誤表示されました」と説明。さらに「全出場者の得点は審査員の厳正な審査によるものです。経緯は番組公式HPで報告いたします。視聴者、関係者の皆様にご迷惑をお掛けし謹んでお詫び申し上げます」とした。
そして6日夜、公式HPから制作会社のカンテレに飛ぶ形で経緯説明が掲載された。それによると、リハーサル時に入力した“仮の得点データ”が誤表示されたもので、田津原の本番での得点が同じ470点だったのは“完全な偶然”であると説明している。
誤表示の原因は、リハーサル時に動作確認の際に仮に入力した数字がシステム上に残っており、本番の得点発表時になんらかの要因でエラーが起きたものだという。エラー発生の原因は判明しておらず、特定の条件の下でエラーが起こることまでは確認できたとしている。
そのうえで、あくまで今回のトラブルは制作側の問題で、田津原理音は間違いなく自らの実力で優勝を勝ち取ったもので、その真実性が疑われるようなことは一切ない、と強調している。
今回のトラブルに関しては、過去に『R-1』でMCを務めていた宮迫博之(元雨上がり決死隊)がTwitterで、「ずっと司会をさせて貰ってたので、分かります、リハーサルで仮にこんな感じになりますで点数を出すんですがその画像がたまたま残ってただけ、ただの偶然です」と述べ、あくまでも偶然だとの見解を示している。
また、有吉弘行も「(ヤラセを)やる意味がないよね。偶然としか言いようがないわな」と断言し、「“事前に点数付けてもらえますか”って言われてさ、あの審査員たちが“あ、はい”って言わないだろ? 審査員なんてやめたって困らないメンバーばっかりだし」との私見を述べて、疑惑を否定している。
だが、どんなに芸能界からヤラセを否定する声が出ても、点数が一致し、その芸人が優勝したという状況から、疑惑が完全に払拭されたとはいいがたい。
「『R-1』に限らず、お笑いのレースはヤラセ疑惑がずっと付いて回ります。これは、お笑いというものを評価するのが、審査員の感覚だけに頼るシステムだからです。明確な評価基準がないため、観客や視聴者の反応とズレることも多々あります。単に審査員が“好き・嫌い”だけで判断しているのではないか、と疑われる状況も頻繁にあり、優勝を逃した出場者から不満が出ることも珍しくありません。そんななかで、生放送中に起きたハプニングが、疑惑を強める結果となってしまいました。
視聴者の反応を見ていると、田津原理音よりもコットンきょんのほうがウケていたようで、それが田津原に下駄を履かせたのではないかと疑われる原因のひとつになっているように思えます。
『R-1』は、この疑惑を払拭するのは非常に困難でしょう。レースの方式や得点の付け方などにも透明性が求められるようになっていくかもしれません」(芸能記者)
番組制作側が謝罪・釈明を行っても、視聴者はすんなりと受け入れている感じではない。しばらく燻り続ける可能性もあり、来年以降の運営にも影響を与えかねない。カンテレ、吉本興業、フジテレビは一丸となって疑惑払拭に取り組む必要があるだろう。
(文=Business Journal編集部)