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カツカレー、千円超えのココイチに957円「かつや」が満足度・圧勝と評価の根拠

文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト
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「カレーハウスCoCo壱番屋」の「手仕込とんかつカレー」(撮影=重盛高雄)

「ココイチ」の愛称で親しまれる「カレーハウスCoCo壱番屋」。ここ数年で複数回にわたり値上げを行ってきたが、「手仕込とんかつカレー」が1093円(税込み、以下同)となっていることに対し「いくらなんでも高すぎる」「ただのカツカレーが1000円」とさまざまな反応があがっている。果たして同商品は1000円以上の価値があるといえるのか、また「手仕込」と銘打たれているが、同じココイチの「ロースカツカレー」(928円)と何が違うのか――。専門家の見解も交えつつ検証していく。

 原材料価格やエネルギーコストの上昇を受けて外食業界は近年稀にみる値上げラッシュに見舞われている。牛丼チェーン「吉野家」は昨年10月に価格改定を実施し、「牛丼」「豚丼」などの丼メニューの本体価格を一律で20円値上げし、「牛丼」(並盛)は448円に。ハンバーガーチェーン「マクドナルド」は1月、「ハンバーガー」を150円から170円に値上げ。「熱烈中華食堂 日高屋」は3月、主要商品を10~50円値上げ。ファミレスチェーン「ガスト」は昨年10月、メニューの約半分を値上げし、「チーズINハンバーグ」を769円から824円(都心部)に値上げした。

 ココイチもご多分に漏れず、数年前から複数回にわたり値上げを実施。昨年12月には同年2度目となる価格改定を行い、カレー6品目を44円値上げ。今年6月現在、定番商品の「ポークカレー」は591円(東京、神奈川、大阪の店舗/以下同)、「ソーセージカレー(4本)」は907円、「やさいカレー」は841円、「チーズカレー」は833円、「イカカレー」は811円、「エビカツカレー」は978円となっており、900円超えのメニューも珍しくない。

 こうした値上げは業績にもじわり響いている。運営会社の壱番屋の2023年2月期連結決算は、売上高は482億円(前期比7.3%増)、営業利益は36億円(同26.5%増)と増収増益となっているものの、20年2月期と比較すると売上高は約1割減、営業利益は約3割減となっている。

「吉野家」や「すき家」では500円以下でカレーが提供

「ココイチといえば、かつてはポークカレーが400円台で提供されており、『トッピングを我慢すれば500円以下でそこそこの品質のカレーが食べられる』というイメージが持たれていたが、少なくても今のココイチは『安いチェーン店』というポジションではなくなった。たとえば牛丼チェーンの『吉野家』や『すき家』では500円以下でカレーが提供されており、安さを重視する客はそちらのほうを選ぶだろう。

 もともとココイチは安易な値下げには否定的で、お客に適正な価格を求める姿勢で知られている。とはいうものの、ここ数年の営業利益の下がりぶりを見ると、原材料価格や人件費などのコスト上昇分を極力、価格に転嫁せずに社内で吸収し利益を削っている様子がうかがえるので、今の価格がギリギリの線だと考えられる」(外食業界関係者)

 なかでも目を引くのは、1000円を超える「手仕込とんかつカレー」(1093円)の高さだが、SNS上では以下のような声も多数あがっている。

<もうトッピングできない…>
<やっぱ「かつや」やね>
<元から高いからかCoCo壱は逆に値上げを感じない>
<味の割に高い値段の割に味普通の代表格>
<家で飯炊いてちょい高めのレトルトカレー食うわ>
<ココイチの満足感のなさ>

 この価格をどう評価すべきか。また、ココイチでは928円で「ロースカツカレー」も提供されているが、「手仕込とんかつカレー」と何が違うのか。フードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらう。

他チェーンで再現できないほどの価値を見つけることはできない

 とんかつはスーパーの惣菜コーナーで300~400円ほどで売られており、ココイチの『手仕込とんかつ』はトッピングのメニューを見ると502円なので、相応の価格だといえます。ココイチのライスはカレー専門店らしく比較的水分が少なめになるように炊かれており、食べやすくなっています。この点はカレー以外の商品をメインで扱うチェーンに対するココイチの優位点となっています。

 6月に都内のある店舗を訪問すると、ほとんどのお客が何かしらのトッピングを加えた商品を注文していました。後日訪問した別の店舗は13席しかなく、満席のため少し待ちました。同じく『手仕込とんかつカレー』を注文しましたが、カレールーは前の店より口当たりが多少緩く、店舗により商品の仕上がりが異なっているようです。

 他チェーンと比較すると、価格妥当性は格段に低くなります。ルーの持つ味のクオリティが他社と同じであり、カレー専門店としての優位性を感じられないことも理由のひとつですが、とんかつなどの揚げ物をメインとするチェーンのカツカレーと比較してみると、意外な実態が見えてきます。

 たとえば「かつや」の「カツカレー」(梅:759円、竹:957円)は、さすがに揚げ物専門店らしくロースかつのサイズや肉の厚さは圧巻です。ルーは、ココイチやマイカリー食堂のものと比べ、ほぼ遜色ないレベルに仕上がっています。オーバル皿で提供され、サイドにキャベツも盛られており、カツカレーとしてだけではなく「かつご飯」としても楽しむことができます。ロースかつ2枚重ねのカツカレーを注文しても、ココイチの「手仕込とんかつカレー」と同じくらいの金額です。

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「かつや」の「カツカレー(竹)」

 また、マイカリー食堂(松のや併設)で「手仕込みロースかつカレー」(690円)を注文してみましたが、ルーはココイチや「かつや」と同様のテイストでした。揚げ物業態の「松のや」併設店ゆえに揚げ物のクオリティもかなり高いレベルにあると感じました。ルー、ご飯、とんかつが混ざっていない状態で提供されます。個々の味を楽しみながら、また合わせながら食べることができます。

 総合的に見ると、カレー専門店であるココイチには、ご飯の量や辛さを選べるという点を除けば、他チェーンで再現できないほどの価値を見つけることはできませんでした。そして、とんかつとルー、そして価格の面において「かつや」に軍配があがると評価できます。

 ちなみにココイチの「手仕込とんかつカレー」と「ロースカツカレー」の違いについて店員に聞いたところ、「手仕込とんかつカレー」は冷凍状態で店舗に納品された肉を解凍し、スタッフの手によってパン粉などをつけて仕込みをすることから 「手仕込」と呼んでいるとのことでした。

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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