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快活CLUB、なぜ人気サービスを続々廃止するのか…不満続出も、すべて想定内か

文=A4studio、協力=西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー
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快活CLUBの店舗
快活CLUBの店舗(「Wikipedia」より)

 漫画・ネットカフェチェーンの大手「快活CLUB」が、人気サービスを次々と終了させており、ファンから不満が続出している。

 無料モーニング廃止、シャワー無料&タオル廃止、ソフトクリームシロップ撤去など、快活CLUBのウリにもなっていたサービスが、どんどん廃止されているのである。

 2021年度の売上高は469億3200万円にも上り、日本経済新聞社が昨年10月にまとめた「サービス業調査」にて、漫画やネットカフェを指す“複合カフェ”業界における売上高1位を獲得していた快活CLUBに、何が起こっているのだろうか。

 そこで今回は、業界事情に詳しい流通ジャーナリストの西川立一氏に、快活CLUBがなぜ人気の各種サービスを取りやめる事態に陥ってしまっているのかなどについて、解説していただいた。

ネットカフェ業界でシェア1位の快活CLUB、親会社は紳士服のAOKI

 まずは快活CLUBの出自について振り返っておこう。

「2003年、多角化経営を進めていた紳士服チェーン店の大手AOKIグループが、ネットカフェ事業として快活CLUBの1号店を幕張(千葉県)にオープンさせました。その後、快活CLUBを続々とチェーン展開していき、紳士服事業に匹敵するAOKIグループの経営の屋台骨として存在感を強めていったのです」(西川氏)

 そんな快活CLUBは、今やネットカフェ市場で4割以上のシェアを占めているといわれている。

「もともとネットカフェ市場は個人経営のお店が多く、大規模チェーンがなかったブルーオーシャンでしたが、そこにAOKIが参入して蹂躙していったからです。AOKIは紳士服事業やカラオケ事業で店舗をたくさん持っており、それらの不採算店などを業態転換させて快活CLUBとしてオープンさせていったことも、功を奏したのでしょう。ちなみに、快活CLUBはフランチャイズ展開しておらず、全店が直営店なので利益率が高く、気づけばAOKIの主力となっていたというわけです」(同)

 だが快活CLUBも、ここ数年は少々苦しい状況にあるという。

「まず、ネットカフェ業界全体が縮小傾向なのです。10年ほど前に比べると市場規模は約半分にまで下がっています。一気に普及していったスマホに人々の可処分時間を奪われたことが大きな要因でしょう。ネットカフェのもうひとつの売りであったレンタル漫画も、漫画アプリの普及により、スマホで読む人が増えてしまいましたしね。

 さらにコロナ禍も痛手でした。ネットカフェはブースごとに仕切られてはいますが、それでも個室の上部や下部は空いているので、同じ空間に大人数が滞在することが前提となっていたサービスです。そのため感染リスクへの懸念から客数は減少しました。コロナ禍の影響は、営業利益の推移を見れば明らか。2018年度の営業利益は約15億円の黒字でしたが、新型コロナウイルスで外出制限や外出自粛がされていた2021年度は約30億円の赤字に転落してしまっていたのです。ただ、コロナ禍の終息が見え始めていた2022年度は約20億円の黒字に復活しています」(同)

各種サービス廃止の背景には物流コストの増加とターゲット層の変化

 ここからは不満続出の要因となっている各種サービスの廃止について伺おう。

「無料モーニング廃止、シャワー無料&タオル廃止、ソフトクリームシロップ撤去、ナイトパック料金廃止などがあります。また、フードメニュー値上げ、深夜店員不在でフード提供不可、学割割引率低下、土日追加料金値上げなど、実質的な値上げやサービス低下の方向に変更されたものもあります。それらの廃止・変更の背景にあるのは、先ほど解説したネットカフェ需要の低下に伴う長期的な売り上げ低下を見越した、運営経費の整理といったところでしょう。

 より直接的な原因と考えられるのが、近年の円安やウクライナ問題に関連した人件費の高騰、物流コストの増加です。特に、無料モーニング廃止やソフトクリームのシロップ廃止など食品系にまつわるサービスの制限は、食品系が物流コストの影響を強く受けているからでしょう」(同)

 こういった人気サービス廃止の影響で、大量のファンが離れてしまっては本末転倒ではないのか。

「確かに、人気サービス廃止で不満の声は漏れても、それで離れる顧客は少数でしょう。依然、設備や清潔度、店舗数の多さからくる利便性の良さでは、他の追随を許していませんからね。また運営側としては、多少離れるファンがいたとしても、節約できる経費と天秤にかけたときに、廃止していったほうがメリットは大きいという判断だったのだと思います。

 サービス廃止に批判的な声もあげる層がいることも理解はできますが、個人的には、これまで快活CLUBが行ってきた多くの無料サービスなどは、異例の手厚さだったように思います。後発で業界に参入したため、認知度を上げて顧客を囲い込むための“期間限定サービス”的な側面もあったのではないでしょうか。現在は盤石の業界1位になり、さらにコスト増加も重なったことから、このタイミングで過剰だった各種サービスを廃止し始めたというのは、適切な経営判断といえるでしょう」(同)

 なるほど。一部ファンから不満の声があがるのは織り込み済みで、デメリットよりもメリットが大きいというジャッジを下していたわけか。今後、快活CLUBのサービス、そして業界内の地位がどう変化していくのか、展望を伺った。

「これまでの快活CLUBは、メインターゲットだった10代から30代向けのサービスを行ってきたように思えます。ですが先述のスマホ普及による客足の低下、加えて高齢化社会が到来するという社会変化を鑑みると、いつまでもこうした若い層だけに向けたサービスを提供するのではなく、今後は中高年層をメインにしたサービスを展開していくのではないでしょうか。

 AOKIは『FiT24』という24時間営業のセルフ型フィットネスクラブの事業も展開しています。中高年の健康管理需要を紐づけて、快活CLUBの店舗にFiT24を併設したり、快活CLUBを利用することでFiT24をお得に利用できるサービスを付与するといった方向に、舵を切っていく可能性もありそうです。

 業界内の地位ですが、そもそも競合といえる大型ライバルチェーンがないので、大きな変動はないでしょう。ネットカフェ事業の本質は“空間を提供する”ということで、自宅以外の場所で気軽にくつろげることに価値があるのです。そのサービスの根幹を守っている限り、大きく低迷するようなことはないと思います。現在、快活CLUBをテレワークに使う人も増えているようですが、こうした需要の変化に素早く対応できるというのもAOKIグループの強みといえるでしょう」(同)

 各種サービスを廃止し、不満が続出していたことは事実のようだが、経営戦略としては英断ということなのかもしれない。業界王者の地位は、まだまだ揺るがなさそうだ。

(文=A4studio)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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