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「かつや」史上最強コスパだが賛否両論…カルビ焼肉&カツ合い盛り丼790円の妥当性

文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト
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かつや「豚カルビ焼肉とチキンカツの合い盛り」(撮影=重盛高雄)

 とんかつ専門店チェーン「かつや」が9日から期間限定で販売している「豚カルビ焼肉とチキンカツの合い盛り」。「梅雨こそ全力飯。」というキャッチコピーのとおりボリュームの多さがウリで、価格は790円(税抜き、以下同)。SNS上ではコスパの高さを評価する声があがる一方、「気持ち悪い」「量が多すぎ」などとさまざまな反応が寄せられている。そのクオリティと価格をどう評価すべきか――。専門家に聞いた。

 国内に約450店舗、海外にも70店舗以上を展開する「かつや」は神奈川県相模原市が発祥の地。1998年の創業と、現在全国展開している大手外食チェーンのなかでは比較的、歴史は浅いといえる。運営会社のアークランドサービスホールディングスは「かつや」以外にも「からやま」「からあげ縁」「マンゴツリー」などを展開し、グループ全体では700店以上を展開している。

「かつや」といえば「とんかつ」を使用したメニューがメイン。「カツ丼(梅)」540円、「カツカレー(梅)」690円、「ロースカツ定食」720円など、ボリューミーかつリーズナブルな揚げもの料理が多くのファンを惹きつけている。会計時に配布される100円の割引券も、多くのリピーター客を生む要因となっている。

 品質へのこだわりも強い。HPによれば、豚肉は北米の大手パッカーからチルド(冷蔵)管理した状態で日本に輸送し、約4週間の間に熟成され旨味に満ちたものを使用。パン粉は「剣立ち」を重視し、粒子の大きさにこだわった生パン粉を使用し、キャベツは指定農場で栽培された朝採れキャベツをカットして提供しているという。

 そんな「かつや」の新商品「豚カルビ焼肉とチキンカツの合い盛り」は、ご飯の上にチキンカツと厚切り豚カルビ、キムチを乗せた一品。丼から溢れんばかりに具材が盛られており、ガッツリ食べてお腹を満たしたい客にとっては「サービス精神満載」のメニューといえるだろう。そのため、SNS上では

<濃すぎない程度にしっかりと味が付いていて、美味しかったです。写真から想像できる以上のボリューム感があり、とても満足できました>

<1枚1枚厚肉で食べ応えのある焼肉とお馴染みボリュームがあるチキンカツにキムチも相まって美味しくて大満足な丼です>

<キムチが豚カルビにもチキンカツにもマッチしてご飯が進む進む。合い盛り丼はこんなメニューが多くて嬉しい…!>

といった声があがる一方、以下のとおりマイナスの反応もみられ、賛否両論に分かれている。

<この豚カルビ、カチカチすぎて萎えました>

<焼きめなくタレも少ない 肉固めで脂身あるけど肉汁少ない>

<量が多すぎて完食は無理>

<ちょっと胸焼けしそう>

<790円って逆にどんな食材使ってるのか疑いたくなる>

 外食チェーン関係者はいう。

「松屋の『松屋ビーフカレー』が680円(税込み)、吉野家の『から揚げ定食』が598円(税抜き)、coco壱番屋の『ビーフカレー』が674円(同)であることなどを考えると、そのコスパはかなり良い。原材料価格とエネルギーコストの上昇を受けて外食業界が値上げラッシュの今、『かつや』史上最強コスパのメニューといっても過言ではないレベル」

 この価格をどう評価すべきか。店舗で実食したフードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらう。

丼の中でそれぞれの具材がほどよいハーモニー

 ご飯の上にチキンカツ、大ぶりのカルビ焼肉が4枚乗り、脇をキャベツが支えている。カルビ焼肉はほのかな温かさを保持しており、口の中でタレと脂身がしつこさを感じさせない。具材が重層をなしているため、それぞれの具材に適度にキャベツが加わることで、味と噛み応えのアクセントになっている。キャベツは味をリフレッシュする効果もあり、ほかの具材の味が濃いほど役割は大きい。

 夕食の時間帯に訪問したためテイクアウト客も多く、かなり待ち時間があったが、カルビ焼肉が温かく提供されたため待った甲斐を感じた。具材とタレの絡み具合も絶妙。「かつや」の定食メニューと異なり豚汁はついていないが、丼の中でそれぞれの具材がほどよいハーモニーを奏でており、一口一口が楽しい。絶対的な量は定食のほうが多いが、定食よりも丼のほうが満足度は高い印象だ。

 30分ほど店舗内に滞在したが、このメニューを注文する客は3人ほどで、多い数字とはいえないだろう。多くの客は定番商品である「カツ丼」や「豚汁定食」を注文していた。今回の新メニューは確かにボリュームは多く、ボリューム感と濃い目の味を好むお客には支持されるだろうが、量ではなく価格相応の味わいを求めるのであれば、定番商品をおすすめしたい。総合的に評価すると、価格妥当性は高くはない。

 ちなみに定食メニューとして「豚カルビ焼肉とチキンカツの合い盛り定食」(890円/税抜き)も提供されており、こちらも実食してみた。チキンカツと厚切りのカルビ焼肉が5枚、サイズは少し小さめだがボリューム感は半端ない。定食ゆえに具材ごとに口に運ぶこととなり、衣と同じくらいの薄さのチキンカツが気になった。カルビ焼肉は厚さは感じるものの提供時の温度はあまり高くないため、甘辛のタレと脂身が存在感を増してしまい、カルビ焼肉を食べているという満足感を低下させてしまっている。チキンカツ、カルビ焼肉、のり、キムチそれぞれの具材がばらばらに音を奏でているという印象が強く、具材のハーモニーが生まれない。全体的に濃い目の味わいに、しつこさを感じるお客も多いのではないだろうか。

(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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