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ケンタッキー、明日~半額販売の隠れた狙い…「ご飯のおかず」化を意識、価格妥当性を検証

協力=稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長
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ケンタッキー・フライド・チキンのHPより

 ケンタッキーフライドチキン(KFC)は明日(12日)から25日まで、「カーネルクリスピー」3ピースを、通常価格の合計810円(税込み、以下同)の半額以下、400円で販売するキャンペーンを実施する。和風テイストが人気の同商品だが、KFCが同キャンペーンを展開する狙いとは。そして400円という価格は「買い」といえるのか。専門家に解説してもらった――。

 全国に1172店舗(2022年3月31日現在)を展開し、フライドチキン専門店チェーンとしては圧倒的な強さを誇るKFC。同市場は意外にもプレイヤーが少ない。21年にはロイヤルグループがバターミルクフライドチキン専門店『Lucky Rocky Chicken(ラッキーロッキーチキン)』をオープンし、一時は5店舗を展開していたが、すでに東京の吉祥寺店と新小岩店が閉店し、伸び悩んでいる模様。中国で2万5000店舗以上を展開する「正新鶏排(ジェンシンジーパイ)」が東京・高田馬場に今年5月に日本1号店をオープンさせたが、今後の展開は未知数であり、KFCの業界トップのポジションは当面、揺るぎそうにない。

 多くの固定客を惹きつける要因となっているのが、秘伝のレシピだ。創業者カーネル・サンダースが1940年につくり上げたというレシピは、11種類のハーブとスパイスを配合したもので、一般的な製法であるフライヤー調理とは異なり、圧力鍋で最高温度185℃で約15分かけて揚げるというもの。店舗内で1本1本、手づくりでつくられ、HP上では品質へのこだわりの強さについて次のように説明されている。

「ハーブとスパイスの配合を知っているのは、世界でたったの3人。スパイスは複数の工場で数種類ずつ配合され、店舗に向けて出荷されます。各店舗でそれらをブレンドして初めて、11種類のハーブ&スパイスが完成」

 メニューとしては定番の「オリジナルチキン」1ピースが290円、「チキンフィレバーガー」が390円、「チキンフィレバーガー」に「ポテト S」とドリンク類(M)が付いた「チキンフィレバーガーセット」が750円。「オリジナルチキン」や「ポテト」、バーガー類やドリンク類、「ビスケット」などを組み合わせた各種ボックス類のほか、現在は期間限定で「レッドホットチキン」(320円)なども販売されている。

「価格帯としては、マクドナルドより少し上、モスバーガーより少し下というイメージ。ただ、ハンバーガーを食べたい人はマクドナルドやモスバーガーに行くし、フライドチキンを食べたい人はKFCに行くだろうから、それほど客層はバッティングしていないという印象。また、マクドナルドにはKFCの『チキンフィレバーガー』より10円安い『チキンフィレオ』があるが、テイストが結構異なるので、マクドナルドでいつも『チキンフィレオ』を注文する人が、わざわざKFCに『チキンフィレバーガー』を食べに行くとは考えにくい。そうしたこともあり、KFCとハンバーガーチェーンのヘビーユーザーはそれほどかぶっておらず、結果としてKFCはライバルとなる存在が意外に少ないのが特徴といえる」

 そんなKFCは今回、「カーネルクリスピー」3ピースのキャンペーン販売を実施。天ぷらをモチーフに開発され、にんにくと醤油のテイストの和風仕立てとなっており、KFCで多くのファンを獲得しているメニューのひとつだ。そんな人気メニューをKFCが半額以下で販売する狙いについて、南インド料理専門店「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔氏に解説してもらう。

惣菜市場の一角に食い込もうとする戦略

 持ち帰りの揚げ物惣菜に関しては、長らくスーパーの惣菜売り場がその独壇場でした。しかし近年、コンビニエンスストアやファミリーレストランなども続々とその市場に進出しています。

 今回のKFCのキャンペーンは、まさにそういった「持ち帰って食卓の一品(=ご飯のおかず)にする」という惣菜市場の一角に食い込もうとする戦略なのではないかと思います。「カーネルクリスピー」は本来、フライドポテトと同様サイドデイッシュの位置付けですが、それは決して肉食民族とはいえない日本人には、感覚的に少し馴染まないところもあります。しかし、日本の天ぷらがモチーフとなっているだけに、「ご飯のおかず」としてなら、確かに食卓にしっくり馴染みそうです。キャンペーンサイトでは「天むす」へのアレンジレシピが公開されていますが、これはまさに「カーネルクリスピー」がご飯によく合うという点のアピールでしょう。

 3ピースで400円というキャンペーン価格は、スーパーの価格帯が意識されたものなのではないかと思われます。同商品の品質であれば互角以上に戦えるでしょう。しかし定価に戻ってもなお競争力を維持し得るかは、何とも微妙なところと言わざるを得ません。

 ただし、実はKFCには「カーネルクリスピー」以上に「ご飯によく合う」商品があります。そう、「オリジナルチキン」です。これを持ち帰ってご飯のおかずにする文化は、沖縄や南九州の一部を除けば決して一般的とはいえませんが、今回のキャンペーンをきっかけにその文化が少しでも浸透すれば、KFCにとって、それはちょっとした成功ということになるのではないでしょうか。

(協力=稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長)

稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長

稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長

料理人・飲食店プロデューサー。鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て円相フードサービスの設立に参加。和食、ビストロ、インド料理など、幅広いジャンルの飲食店の展開に尽力する。2011年、東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。現在は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に、業態開発や店舗プロデュースを手掛けている。近著は『食いしん坊のお悩み相談』(リトル・モア)。

Twitter:@inadashunsuke

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