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多摩センター駅から徒歩39分:ビッグモーター本社移転先、六本木ヒルズとの落差が…

文=Business Journal編集部
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ビッグモーター本社移転先の多摩店(同社HPより)

 自動車保険の保険金水増し請求問題に揺れる中古車販売大手ビッグモーターが、現在は東京都港区の六本木ヒルズ森タワーにある本社を東京都多摩市貝取の多摩店に10月1日付けで移転すると発表した。六本木ヒルズといえば大手IT企業や外資系金融機関、大手法律事務所などが入居し、六本木駅と直結している好立地でも知られているが、本社移転先の多摩店は最寄り駅である京王・小田急永山駅、京王・小田急多摩センター駅から徒歩で30分以上かかり、その落差が話題を呼んでいる。

 昨年に不正が発覚して以降、沈黙を守っていたビッグモーター経営陣は7月25日、騒動後初となる会見を実施。それから2カ月がたとうとしているが、その影響は広まる一方だ。今月8日には、癒着が指摘されていた大手損害保険会社、損害保険ジャパンの白川儀一社長が辞任すると発表。損保ジャパンは不正の舞台となったビッグモーターの板金部門(自動車修理部門)に2004年から約20年にわたり出向者を送り続けていた。金融庁は損保ジャパンとビッグモーターに19日から立ち入り検査を実施することを公表しているが、これに先立ち15日には警視庁と神奈川県警が、器物損壊の疑いでビッグモーター本社の家宅捜索を実施。同社は本社の指示に基づき店舗前の公道の街路樹を勝手に伐採したり除草剤を散布していた疑いが持たれている。

 ビッグモーターによる店舗前の植栽の無断伐採は公道だけにとどまらない。イオンリテールは、店舗敷地内にあるビッグモーター店舗が店舗前の植栽を無断で伐採しコンクリート舗装していたことを受け、ビッグモーターとの土地賃貸借契約を解約することを15日に発表した。

 一連の樹木伐採は、同社が行っていた「環境整備点検」に起因する。同社では役員が定期的に店舗を巡回し、不備が見つかると店長に降格が命じられる環境整備点検を行っており、店舗従業員は前日に深夜まで掃除をしたり、店長の指示で店舗前の街路樹や植栽を伐採していた。ちなみに環境整備点検は経営コンサルティング会社「武蔵野」の指南によるものとみられ、武蔵野は当サイトの取材に対し以下の回答を寄せている。

「経営計画書作成につきましては、(編集部追記:ビッグモーターに)セミナーにご参加頂いた事はございます。セミナーでは、作成する意味・目的、またその概要について説明しております。またセミナー参加後に作成された経営計画書は、弊社では把握しておりません。環境整備につきましては、弊社の環境整備プログラムを(編集部追記:ビッグモーターに)実施した事がございます。プログラムでは、日々の環境整備や点検方法について、説明しております」

顧客にも不正行為

 ビッグモーターの不正行為は顧客にもおよんでいた。消費者庁は5日、2022年度に同社に関する相談が約1500件も寄せられていたと発表したが、同社が提供する撥水加工「ダイヤモンドコーティング」をめぐり、営業担当者がコーティングを望んでいない顧客に対し車の販売は困難だと伝え、顧客から約7万円のコーティング料金を取って販売したものの、コーティングを施さないまま納車した事例もあったという(1日付「FNNプライムオンライン」記事より)。また、トヨタ「クラウン」の最上級クラス「RS Advance」の購入を希望し購入契約の締結と頭金の支払いも済んだ顧客に対し、営業担当者が5段階下のクラスの車を納車しようとしていたこともあったという(5日付「FNNプライムオンライン」記事より)。

 同社社員のよる悪質な行為は枚挙に暇がない。車の購入者が代金の約100万円を現金で支払おうとしたところ、店舗の営業担当者から総支払額は変わらないので1年だけローンを組むよう説得され、結果的に120万円を支払う羽目になったり、新品タイヤなど30万円相当のオプションを無償で付けるのでローンを組むよう言われた客が、約束を反故にされオプション分を有償で契約させられたケースも(8月11日付「AUTOCAR JAPAN」記事より)。ビッグモーターに売却した車について冠水した過去はないにもかかわらず、冠水した跡があるとして突然700万円の賠償請求訴訟を起こされたり、店舗で売却のキャンセルを告げると店長から罵声を浴びせられるようなケースもあったという(8月11日付「弁護士ドットコムニュース」記事より)。このほかにも、中古車の一括査定サイトでは、登録した顧客のメールアドレスや電話番号などを入手し、その顧客になりすまして勝手に登録を解除する一方で顧客に接触し、他の中古車買取業者との価格競争を回避する「他社切り」という行為まで横行していたという(8月9日付「FNN」記事より)。

本社移転先の環境

 不正行為が次々と発覚するなか、同社の業績は悪化している。15日付「NHK NEWS WEB」記事によれば、8月の中古車の販売台数は例年と比べて7割以上の減少、車の買い取り台数は5割以上の減少となっている。8月には銀行団から借入金90億円の借り換えに応じない旨を伝えられており、資金繰りのため中古車販売店「ガリバー」の運営会社IDOMの株式売却を検討していると報じられているが、そんな資金繰り対策の一環が前述の本社移転だ。

 現在の本社所在地である六本木ヒルズ森タワーには、ゲーム関連会社のポケモン、フリマアプリ運営会社のメルカリ、外資系証券会社のゴールドマン・サックス証券など名だたる有名企業や大手法律事務所などが入居しているが、不動産業界関係者はいう。

「以前に六本木ヒルズに入っていた企業の人に聞いたところによると、ワンフロアの月の家賃が約2000万円もかかり、家賃を払うために利益を稼がなければならないような気分だと言っていた。その企業はその後、別の新築オフィスビルから好条件での入居をオファーされ、そちらに移った。今はどうか分からないが、以前の六本木ヒルズはオフィスビルとしての箔をつけて入居希望企業を増やすためなのか、一部の有名企業には破格の安い家賃を提示して入居させていた。

 竣工してからすでに20年がたち、それなりに老朽化してオフィスビルとしての『新しさ』は失わているだろうし、現在では六本木に会社を置くことにビジネス上のメリットがそれほどあるわけではなく、そもそも六本木駅というのはちょっとアクセスが不便という面がある。今のトレンドとしては、山手線沿線で再開発が進む渋谷駅や五反田駅、東京駅のエリアのほうが勢いのある企業からは人気が高いという印象」

 とはいえ、都心の繁華街に位置し六本木駅と直結している六本木ヒルズの利便性は論を待たないが、そこを後にしてビッグモーターが本社を移す先の多摩店は、どのような立地環境なのだろうか。

 多摩店の住所は東京都多摩市貝取5-3、最寄り駅は京王・小田急多摩センター駅か京王・小田急永山駅。インターネットで調べると、前者からの道のりは2.8kmで徒歩約39分、後者からは道のり2.5kmで徒歩約34分。県道18号線鎌倉街道沿いに立地しており、すぐ近くには「メルセデス・ベンツ多摩」や「日産東京販売 多摩ニュータウン店」などがある。

「多摩センター駅周辺には企業の大規模なシステムセンターなども多く、商業施設もあるので、そこそこ開けてる。ちなみにかつては百貨店の三越もあったが、数年前に撤退した。ビッグモーター多摩店がある駅の南側方面は、駅から10分も歩けば、周りに遮るものがなく、夏は直射日光にさらされるので、駅から30分もかけて歩くというのは、かなり厳しいというか、無理だろう。ビッグモーター多摩店の近くにバスの停車場があるかは知らないが、毎日通勤するなら車を利用するほかないのでは。六本木とは環境が何もかもすべて真逆といっていいエリアで、ランチを食べられるような店も近くに多くはないだろう。それにしても六本木ヒルズからいきなりここに本社を移すといのは、言い方は悪いが、ものすごい落差というか、『都落ち』感がハンパない。そんなこと実際にあるんだな、というのが正直な感想」(多摩センター駅を利用する会社員)

BusinessJournal編集部

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