日本マクドナルドが1日に公式X(旧Twitter)アカウント上に投稿した動画CMのポストが、わずか2日間で世界で3600万回以上、閲覧されるなどして反響を呼んでいる。夕暮れ時に店舗内の窓際の席で中学生か高校生と思われる男女2人組がバーガー類と「マックフライポテト」などを食べる様子を描いた20秒ほどのアニメーションで、童謡『夕焼け小焼け』の音楽が流れるなか、仲睦まじくフードを食べるというだけの何気ない日常生活の一場面を切り取ったもの。ストーリーとしては何か特別な出来事が起きるわけではないが、この動画に海外からも数多くの声が寄せられる一方、SNS上では「アメリカはポリコレしたほうが売れる」「反ポリコレ」などと「ポリコレ」というキーワードと関連付けるコメントも目立っている。その背景や、マクドナルドが今回のようなストーリー上「何も起きない」CMをリリースする狙いなどについて、業界関係者の見解も交えて追ってみたい。
話題になっている動画の登場人物は、学生の男女2人組のみ。横に並んで座っていると、何やら窓の外に気になる動きがあった様子で、女子が男子に話しかけながら首を伸ばし、女子の顔が男子の顔に近づく格好になる。すると男子は照れた様子を見せ、それを見た女子は手を叩きながら笑う。すると今度は女子が男子の肩に手を添えてヒソヒソと話しかけ、男子は再び照れた様子で飲んでいたドリンクを口から吹き出しそうになるという内容だ。
動画の最後には「今だけマックTHEチキン入りも」「ポテナゲ」「夕方5時から」という文字が表示されることから、マクドナルドが「夜マック」のメニューとして提供する、「マックフライポテト」と「チキンマックナゲット」のセットメニュー「ポテナゲ」シリーズをPRする動画だとみられる。
ちなみにマクドナルドといえば、9月にも公式Xアカウント上に、自宅で女の子と両親の3人が仲睦まじく「ポテナゲ」を食べるというだけの何気ない日常生活の一場面を切り取った動画CMを投稿し、わずか4日間で世界で約1.1億回閲覧されるなどして大きな反響を呼んだ。この動画でも『夕焼け小焼け』が使用され、アニメーションのタッチも似ていることから、今回の動画はその第2弾とみられるが、企業のPR・プロモーションを手掛けるマーケティング会社プロデューサーはいう。
「一見すると単に企業イメージを訴求するブランドCMのようにみえるが、動画の最後に商品名とその提供開始時間が明記され、内容的にも夕方5時以降に来店して『夜マック』で『ポテナゲ』を食べることの楽しさをPRしており、『何も起きない』ストーリーでありながら実は具体的商品を強く宣伝するCMになっている点は興味深い。さすがマーケティングに長けたマクドナルドの手法だと感心する。
第1弾はファミリー層、第2弾は学生層をターゲットにしたものだが、実際に16~18時台のマクドナルドの店舗には学生の2人組やグループ客の姿が目立ち、バーガー類ではなく『マックフライポテト』や『チキンマックナゲット』、『三角チョコパイ』などのスイーツを注文しているケースも多い。マクドナルドとしては『夕方×学生×ポテナゲ』に商機ありと判断して、宣伝に注力しているのだろう」
海外の人からみると新鮮
今回の動画に対し、SNS上では以下のようにさまざまな声が寄せられている。
<流石マクドナルドマーケティング練ってる>
<様子見てるだけで微笑ましい光景というのが世の中には存在する>
<誰もがこういう時期があった>
<なかったはずの記憶がよびさまされる>
<見ているとなんか安心する>
<キラキラした青春とか甘酸っぱい恋愛模様なんて宣伝に使う限りは所詮はマーケティングの一貫>
<“配慮”とかしないんですかね>
<アメリカはポリコレした方が売れるだけで別に配慮してるわけじゃない>
<ポリコレした方が売れるんじゃなくてポリコレしないと叩かれる そして従ったところで特に売れるわけでもない>
<普通にとおってきた人:良いじゃん 売れ残り無駄にプライド高いマン:配慮しろ>
なかには「反ポリコレ」「無配慮」といったキーワードと関連付けたコメントもみられるが、どういうことか。
「近年、特にアメリカでは人種の多様性への配慮や政治的・社会的イシューへの言及がみられるCMも増えており、同じ国の男女が異性間の恋愛をしているかのような設定で、加えて『何も主張していない』という点が、海外の人からみると新鮮だと映るのかもしれない。もっとも、このCMは日本の消費者をターゲットにしているので、意図的に海外でウケることを狙って制作されたわけではないだろう。
また、このような『甘酸っぱい体験』がない人々から『配慮が欠けている』という声も出ているようだが、CMにおいてそうした反応が一定程度生じるのは仕方のないことであり、感想の多くは好意的なものなので、企業イメージと商品認知度の向上や来店の動機付けという意味では、CMとしては高い効果があったと評価できるのでは」(同)
(文=Business Journal編集部)