不織布最大手の日本バイリーンは、PM2.5対策のマスクとして新ブランド「フルシャットマスク」を立ち上げた。PM2.5の防止対策にはマスクと顔とのすき間を小さくしなければいけない。ふつうサイズのマスクでは大きすぎてすき間ができるという、女性のユーザーの声を取り入れて開発した。PM2.5の十分な捕集性能があって、かつ呼吸しやすい特殊フィルターを使用した立体型のマスクだ。「ふつう」(大人用)、「小さめ」(女性用)、「こども」(子供用)の3サイズを、バイリーンのオンラインショップで販売している。
医療用不織布トップのホギメディカルは、一般消費者向けマスク市場に参入した。これまで医師や看護師向けに手術用マスクを販売していたが、一般の人からPM2.5対策用マスクを求める声が相次いだため、参入を決めた。医療従事者向けマスクと同じフィルターを採用し、小さな粒子を捉える一方で、長時間着けても息苦しくならないのが特徴だ。
PM2.5対策として注目を浴びているのが衛生陶器トップ・TOTOが開発した「ハイドロテクト」。光触媒を利用し、太陽光や雨などを使った環境浄化技術である。建物の壁に塗れば、太陽の光でPM2.5の成分のひとつである窒素酸化物を分解することができる。家1軒の壁に塗れば、窒素酸化物を除去する効果があるという。TOTOは「ハイドロテクト」で中国の大気汚染に挑む。PM2.5対策の中核商品になる可能性を秘めており、株式市場ではPM2.5銘柄のニューフェースとして期待が高まっている。
PM2.5による健康被害への懸念の高まりを受け、消費者のニーズに応えるかたちで、皮肉にも家庭用マスク市場が活気づき始めている。
(文=編集部)
【補足:PM2.5による健康被害】
PM2.5は、呼吸器系の病気だけでなく、心筋梗塞やがんの原因になるとの指摘がある。前出のIARCはPM2.5を含む大気汚染物質の発がんリスクについて、5段階のうち最高の「発がん性がある」(グループ1)に分類した。これはアスベスト(石綿)やたばこと同じレベルだ。
がんとともに心配なのが、心筋梗塞や脳梗塞といった循環器系疾患への影響だ。循環器系疾患を引き起こす経路は、肺の末端の肺胞に入り込んで炎症を起こすだけでなく、炎症が全身に広がって循環器系を痛める→肺にある自律神経系(交感神経と副交感神経)のバランスを崩し、不整脈を引き起こす→肺胞からPM2.5が血液中に溶け込んで全身に回り、動脈を収縮、硬化させるとされている。
また、大気汚染と乳がんや膀胱がんの関係を指摘する調査報告もある。不妊症や胎児への影響も懸念されるという。