これまで大手商社のドル箱事業は資源関連事業であり、伊藤忠も資源ビジネスの鉄鉱石で稼いできた。3005億円という数字が、単なる資源価格高騰による一時的なものなのか、全社的に筋肉質になってきた証拠なのか、それが問われたのが13年3月期決算だった。同期は新興国の景気減速のあおりを受けた資源価格下落の影響をストレートに受けて、大手商社は軒並み減益となった。その中で伊藤忠の連結純利益は6.7%減の2802億円と、資源依存度が高い三菱と三井の落ち込みが大きかったのに対して、減益幅は比較的小さかったが、非資源部門の稼ぐ力が増してきた結果にほかならない。
そして今期(14年3月期)は、非資源分野が貢献し業績回復が鮮明になる。13年9月中間期の連結純利益は前年同期比16.1%増の1651億円。ドール買収の効果も出て過去最高益を更新した。14年3月期の連結純利益の予想は、三菱が4000億円、三井が3700億円、伊藤忠が2900億円、住商が2400億円、丸紅が2100億円。上位2社との差は大きいが、3位の座が定着した。
総合商社が資源の権益を、先を争って買う時代は終わった。岡藤氏の目標は繊維や食品など資源以外の分野で「トップ商社」になることだ。もともと強かった繊維部門は圧倒的な1位であり、食料部門では三菱とトップを争う。繊維、食料の2枚看板に加え、住生活・情報部門を加えた生活消費関連で業界首位を目指す。
伊藤忠は13年4月から始まった新中期経営計画では、8000億円を新規投資し、この内3分の2を非資源分野に充てるとしている。これまでは資源と非資源に1対1の割合で投資してきたが、これからは1対2の割合に逆転させる。ドール買収は投融資を非資源分野にシフトしたことの象徴である。
そして今年、伊藤忠がどのような次の一手を打ってくるのかに注目が集まっている。
(文=編集部)