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HV販売台数がEVを逆転「トヨタ会長は正しかった。恐ろしいほどの先見の明」

文=Business Journal編集部
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トヨタ自動車の公式サイトより

 自動車販売台数ベースで世界第2位の自動車市場である米国で、政府が販売促進に注力する電気自動車(EV)をハイブリッド車(HV)が逆転したことが注目されている。世界的に進んでいたEVシフトに急失速の兆候が表れ始めるなか、EVに懐疑的な姿勢を見せていたトヨタ自動車と同社会長の豊田章男氏をめぐって「やはり正しかったのでは?」と高く評価する声も広まりつつある。

 欧州は2035年までに全ての新車をEVなどのゼロエミッション車(ZEV)にするという方針を掲げており、米国政府は23年、EVの購入者向けに最大7500ドルの税額控除を行い、一部州は将来的に全新車のZEV化を決めている。日本も35年までに全新車を電動車にする方針を掲げるなど、EVシフトは世界的潮流でもあった。

 もはや「脱エンジン車」「脱ガソリン車」は必然だとみられていたが、変調は徐々に表面化。米国では22年10~12月期から3四半期連続でHVの販売台数がEVを上回り、23年10~12月にはトヨタのHVの販売台数が四半期ベースで過去最高の約18万台となり、米テスラのEV(約17万台)を上回るという事態が起きた(4日付読売新聞記事より)。

 こうしたHV好調・EV失速の動きは米国に限らない。2月8日付日本経済新聞記事によれば、欧州市場の22年から23年にかけてのEV販売の伸びは2.5ポイントであるのに対し、HV(HEVのみ)のそれは3.1ポイントとHVのほうが上回っている。また、23年の新車販売に占めるHVの比率は33.5%なのに対し、EVは14.6%にとどまっている。そしてガソリン車の占める比率の下落率は縮小傾向にあり、22年から23年にかけては1.1ポイントの下落にとどまり、23年時点でも新車販売の35.3%を占めている。そして、エンジン車とハイブリッド車を合計した「エンジン搭載車」の比率は同年時点で82.4%となっており、脱エンジン車を掲げる欧州ですら、いまだ新車販売の8割がエンジン車となっているという。

 ちなみに日本の新車販売市場におけるEVの比率はわずか2~3%。テスラの23年の販売台数は約5500台にとどまっている。

 こうした現状を受け、自動車メーカーも方針転換をあらわにしている。30年に完全電動化をするとしていたメルセデスベンツはこれを撤回し、新型エンジンの開発に着手。GMはプラグインハイブリッド車(PHV)の生産再開の検討に入ったと伝えられており、ミシガン州の工場での電動ピックアップトラックの生産拡大の延期を発表している。

 そして世界を驚かせたのが、アップルのEV開発からの撤退だ。アップルは2010年代の半ばから完全自動化機能を搭載するEV「アップルカー」の開発に取り組んでいたが、先月に中止が明らかとなった。

 アメリカの23年のEV販売台数は119万台。バイデン政権は32年に新車販売の67%、年間販売台数に換算すると約1000万台をEVにするという目標を掲げているが、自動車メーカー関係者はいう。

「アメリカではEV販売台数が前年同月比マイナスとなる月も出ているので、すでにこの政策は破綻している。さらに二酸化炭素排出規制に否定的なトランプ氏が今年の大統領選挙に勝利すればEV優遇措置は廃止ないし縮小されるとみられており、各国政府の政策や自動車メーカーは大きくギアチェンジせざるを得なくなる」

EV不調の原因

 EV不調の原因は何か。まず挙げられるのが費用の高さだ。たとえばテスラ「モデルS」は新車時価格が約1300万円であり、少し前にはバッテリーの交換費用としてテスラが230万円を提示していることが判明し、一部で話題になった。

「日本ではテスラ以外のEVもガソリン車やHVと比べると高額で、パーツ交換費用も高い。充電ステーションも少なく、自宅で充電できるといっても、現実問題としてガレージ付きの戸建て住宅ではないと厳しく、ガソリン車やHVの給油時間に比べてEVの充電時間ははるかに長い。また大量のバッテリーを積んでいるため廃車コストも高くなる可能性があり、『冬の極寒時に動かない』というニュースも相次ぎ、特に寒冷地では消費者の選択肢として挙がるケースは少ないだろう」(ディーラー関係者)

 別の自動車業界関係者はいう。

「原材料の採掘から製造、廃棄まで全工程を比べれば、EVのほうがエンジン車より何倍も二酸化炭素排出量やエネルギー消費量、鉱物資源の消費量は多く、『EVのほうが環境負荷が低くてクリーン』という謳い文句が嘘だということは、すでに広く知られている。また、世界のEV市場ではすでに中国のBYDがテスラを抜いてシェア1位となっているが、EV推進により自動車市場で中国勢が台頭していることに対し、米国と欧州で危機感が高まっており、各国政府がEV一辺倒の路線を転換させるのは時間の問題だとみられている」(3月3日付当サイト記事より)

「エンジン車は必ず残る」

 こうした状況を予測していたかのようなトヨタの姿勢が今、改めて注目されている。マツダが30年までに全販売に占めるEVの比率を25〜40%に、ホンダは40年までにEV・燃料電池自動車(FCV)販売比率をグローバルで100%に、日産自動車は欧州市場において26年度における電動車両の販売比率を98%にする方針を決定するなど、日本勢もEVに前のめりになるなか、トヨタはEV普及に懐疑的な姿勢を見せてきた。26年までに世界で年間150万台のEVを販売するとの目標を公表しているものの全方位戦略を維持しており、豊田章男会長は1月の講演で「いくらBEV(バッテリー式電気自動車)が進んだとしても市場シェアの3割だと思う」「エンジン車は必ず残る」と語るなど、EVへの過度な期待を避けている。

「利便性やコストの面に加え、原材料のレアアースなど鉱物資源の採掘地が一部の途上国に偏ることで過度の資源調達競争が起きる懸念も指摘されている。すでに大手メーカーのなかにも調達が難航するところも出ている。資材発掘や発電まで含めたトータルの製造コストの高さや環境負荷の高さからも、トヨタとしては『経済原理に照らし合わせて、そのような車が世界の主流にはなり得ない』という判断だったのでは。さすがというか、恐ろしいほどの先見の明だろう」(自動車業界関係者)

(文=Business Journal編集部)

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