インターネット通販サイト「amazon.co.jp(アマゾン)」で虚偽の大幅な値引き表示が横行していることが以前から問題視されているが、商品タイトルの先頭にメーカー名が記載されていなかったり、“電撃エフェクト”や“水しぶきエフェクト”で加工されている画像が使われている商品は規約違反であるため避けたほうがよいという情報が一部SNSで話題となっている。果たしてこれらの情報は事実なのか。また、筋が悪い出品を見抜く方法はあるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
アマゾンでよくみられるのが大幅な値引き表示だ。たとえば「イヤフォン Bluetooth」で検索をかけて表示された商品一覧をみると、「タイムセール」という表示とともに「参考価格」と大幅に値引きした実売価格を提示している出品が多数みられる。なかには、
「-96% \1,590 参考価格\35,900」
「-95% \1,972 参考価格\35,999」
「-94% \1,590 参考価格\26,999」
「-92% \2,288 参考価格\26,999」
「-91% \2,090 参考価格\23,999」
など9割以上の値引きを提示するものも目立つ。自社製品にどのような「定価」を設定するのかはメーカー側の自由であり、提示されている定価が正しいかどうかを客観的に評価することは難しいが、アマゾン運営元はマーケットプレイスの「商品登録ルール」で以下のように定めている。
「セール価格を設定する場合の販売価格および参考価格も、適用ある法令を遵守した価格である必要があります。例えば販売価格および参考価格をそれまでより高く設定したり、根拠のない価格に設定することは、適用ある法令上問題となる場合があります」
「不当表示が発見された場合には、商品ページの削除、出品の一時停止、出品資格の永久停止等を含む、当サイトが適切と考える措置を取る場合があります」
マーケットプレイスの「商品登録ルール」
上記のような大幅な値引きを行う商品ページでは、商品説明文に不自然な日本語表現が散見されたり、カスタマーレビューに高評価の書き込みが多数並んでいるケースも目立ち、販売業者を探ってみると住所が中国となっているものも多い。そして商品説明文は非常に長く、最新機能、高性能である点を強調しつつ
<プロのオーディオテストにより、ライブのようにベストな高低音が体験できる>
<迫力ある低音から自然な中音、伸びやかな高音まで幅広く楽しめ、妥協のない高音質サウンドを実現しており、原音を忠実に再現できます>
<人気のLED電量表示インジケーター付き、高級感の青色で明瞭に溢れて>
<何千人もの耳の形状をスキャンし、その結果を最先端のアルゴリズムによるシミュレーションで解析して設計されて、最適な音質に調整しながらしっかりと耳にフィットしたイヤホン本体を設計しました>
<快適な装着感ワイヤレスイヤホン>
<超小型のデザインなので、とても人気があります>
<通学や通勤などの外出時でも、在宅勤務中や会議中などの自宅での使用時でも、いつでも安定して接続でき、途切れなどの心配がありません>
<LEDディスプレイが点滅してイヤホンが充電中であることを示します。100%から1%に下がり電力残量が分かります>
<水洗い、汗や水しぶき、急に雨が降っても、イヤホンを守れる防水仕様でございます>
など優位性をアピールする文言があふれている。
このほかにも、商品タイトルが異様に長いにもかかわらず商品名が記されていない点やイメージ写真に水のしぶきや光線、勢いのある風を表す“エフェクト”が多用されている点なども特徴だが、実はマーケットプレイスの「商品登録ルール」には次のように定めている(例として「エレクトロニクス」カテゴリー)。
<・商品名について
〔メーカー〕 〔ブランド名〕 〔商品名〕〔仕様/色・サイズ・タイプ等〕〔型番〕
【注意点】
スペースも含め全角50文字以内で入力して下さい。>
だが、実際にはメーカー名やブランド名が入っていなかったり、50文字以上のものは珍しくない。
「ユーザの目に留まって売れる」ということが一番重要
こうしたなか、アマゾンの規約では「商品タイトルの先頭にメーカー名を記載する」「ページ内の商品説明画像に“電撃エフェクト”“水しぶきエフェクト”を利用するのは禁止」と定められているという情報もみられるが、ECサイトでの出品代行やコンサルティングなどを行う株式会社ネットショップ総研の幅貴道氏はいう。
「商品ページのメインタイトルにメーカー名や商品名などを入れるというルールや、トップの商品画像にエフェクト加工を入れてはいけないというルールはあるものの、それに則っていないからといってアマゾンから注意を受けるというケースはあまりないです。そもそも、なぜこうしたルールが定められているのかといえば、より消費者に商品の内容を分かりやすく、伝わりやすくするためです。その観点から考えれば、たとえば知名度の低い中小企業のメーカーがタイトルに社名や商品名を入れたところで、ユーザ側は何のことかわからないので、有益な情報とはいえません。それよりも、商品の用途や重量、本数といったユーザが知りたい具体的情報を入れたほうが親切だし、購買につながります。ですので、大手メーカーの商品でもタイトルにメーカー名や商品名が入っていないものもあります。
また、アマゾンは検索結果一覧の上位にどの商品を表示させるのかという判定に独自のアルゴリズムを使っていますが、SEO的な観点でいえば、商品ページの構成がきちんとルールに則っているのかどうかという点は加点要因ではあるものの、実際にどれだけ売れているのかという販売数量の多さのほうが加点要素としては大きいので、結局は『ユーザの目に留まって売れる』ということが一番重要になってきます。逆にいえば、ものすごくルールに忠実に商品ページをつくると、ユーザへの訴求力が低くなって逆に売れないということもあり得ます」
見極めるポイント
明らかに不自然と思われる大幅値引きなどの価格設定について、運営元は取り締まりなどは行っていないのか。
「アマゾンが取り締まりに力を入れているとは思われませんが、過去に一定の販売期間や販売実績がなければ値引き表示=二重価格表示は行えない仕組みになっています。なので、それを逆手に取って、あえて最初は高い価格を設定しておいて、二重価格表示が行えるようになったところで『●●%引き』というかたちでタイムセールを打つという行為を行う業者もあります」(幅氏)
なぜアマゾンは商品ページの規約違反や過度な値下げ表示の取り締まりは消極的なのか。
「例えば非常に安価で質の良くない中国製商品を買ったとして、『全然使えるので問題ないし、安く変えてラッキー』と考える消費者も多いので、結局は個々の購入者の価値観や評価次第です。アマゾンとしては『とりあえず使ってみて自分で判断してくださいね』というスタンスで、それゆえに基本的には商品到着から1カ月以内であれば返品可能としているのだと考えられます」
では、買うと危ない商品を見抜いたり、商品一覧に表示させないようにする方法はあるのか。
「サクラチェッカーなどは、あまり有効とはいえません。見極めるポイントは大きく2つあり、一つは値引き率です。値引き率が40%を超えるものは避けたほうが無難です。20%オフというのは現実的にはあり得ますが、40%以上のオフは明らかに不自然です。2つ目はカスタマーレビューです。たとえば1000件のレビューのうちの何百件もサクラの書き込みで埋めることは困難なので、それくらいの件数のレビューがあって、概ね4.5点を超えるくらいであれば、信用できる確率は高いといえます」
(文=Business Journal編集部、協力=幅貴道/ネットショップ総研)