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アマゾン、凄まじい大量解雇…過酷な人事評価制度、自動化された解雇システム

文=Business Journal編集部
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「amazon.co.jp」より

 米アマゾン・ドット・コムが凄まじい勢いで社員の解雇を行っている。昨年までに約2万7000人の削減を行っているが、今年1月にも会員向け動画配信サービス「Amazon Prime Video(アマゾン・プライム・ビデオ)」や映画・配信番組の製作スタジオで数百人、ゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」で500人強を削減することを発表。そのようななか、同社の過酷な人事評価制度の存在もクローズアップされている。日本ではアマゾンジャパンの元社員が不当解雇されたとして同社を提訴する動きも出ているが、アマゾンをはじめとする外資系企業の人事評価制度、そして解雇の実態に迫ってみたい。

 米アマゾンはコロナ禍による巣ごもり需要の高まりを受けて人員を拡充していたが、増大した人件費の圧縮のため人員削減にシフト。昨年1月までに約1万8000人、3月に約9000人を解雇し、11月にはゲーム部門「Amazon Games」で約180人を解雇。今年1月には「Prime Video」と映画・配信番組の製作スタジオで数百人、「Twitch」で500人強を削減するのに加え、2月には薬局部門「Amazon Pharmacy」とヘルスケア部門「One Medical」で数百人を解雇した。

 アマゾンのみならず、人員解雇の波は米国IT企業全体で広がっている。2022年以降、フェイスブックを保有するメタは1万1000人以上、マイクロソフトは約1万人、ネットフリックスは約450人を削減すると発表。X(旧Twitter)は22年10月にイーロン・マスク氏による買収後、解雇された人も含め全社員の約8割にあたる6000人以上が退職したとされる。

「よく外資系企業は決断がスピーディーといわれるが、裏を返せば事業縮小や撤退の決断も速い。撤退する事業に従事する社員は、日本企業のように他部門への転籍といった措置は取られず、『はい、さようなら』と解雇される。アマゾンについていえば、動画・映像事業強化のために22年に大手映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を約9700億円(当時のレート)で買収し世間を驚かせたが、2年たって人員余剰が明確になったということで解雇に踏み切るということだろう。One Medicalも22年にオンライン診療サービスの会社を買収したものだが、人員が余剰と判断すれば躊躇(ちゅうちょ)なく解雇に踏み切るということだ」(外資系IT企業社員)

「悔やまれない退職率」

 そんなアマゾンの人事評価制度が注目されている。7日付「BUSINESS INSIDER」記事によれば、社内には、同僚との業績比較や将来発揮することが期待される潜在能力などの観点から従業員を評価するための評価プロセスを記したガイドが存在し、「フォルテ(Forte)」と呼ばれる従業員評価が年1回実施され、そこで給与が決まるという。また、各部門のマネジャーには「悔やまれない退職率」の割り当てや、各業績等級に一定割合の従業員をランク付けすることなどが課されているという。

「『悔やまれない退職率』というのは、各部門に所属する社員全体のうちで評価が低い下位数%の社員を退職させるというもの。こうすると自動的に毎年、パフォーマンスの低い人材が去って、その代わりに新たに高いパフォーマンスが見込める人材が入ってくることになるので、企業としては効率が良い。もっと先鋭的なのがネットフリックスで、『その分野でもっとも優秀だと評価できない人材は解雇しなければならない』というルールがあるといわれている。

 各業績等級に一定割合の従業員をランク付けするというのは、『悔やまれない退職率』とも密接に関係してくるが、各部門内で各評価ランクに社員全体のうちの何%を割り当てるのか『枠』を決めておくというもの。これによって『Aさんはパフォーマンスが上位10%に入る人材』『Bさんは下位10%に入る人材』と明確になるので、人員削減の際に誰を残して誰を解雇すべきかが自動的に決まる。また、各評価ランクに何人割り当てるのかを決めておけば、部門ごとの報酬総額もぶれにくくなる」(外資系IT企業社員)

PIPの存在

 アマゾンの人事評価をめぐっては、紛争も起きている。21年、アマゾンジャパンに勤務していた男性が不当解雇されたとして社員としての地位確認などを求めて同社を提訴。男性によれば、同社は男性に業務に必要なシステムの使用や会議への出席を禁止し、退職勧奨を行った上で、勤務成績が改善しなかったという理由で解雇したという。昨年9月には、アマゾンの配達ドライバーが過重労働や全国最低レベルの日当の是正を求めて労働組合を結成。22年10月14日付「FRIDAY DIGITAL」記事によれば、アマゾンジャパンに勤務していた男性は課題達成の基準が不明確なコーチングプランに参加させられ、業務改善の名目で圧迫面接や退職勧奨を受け、上司によるパワハラの疑いを人事に相談したところ、その相談内容が上司に筒抜けになっていたという。また、社内ではPIP(Performance Improvement Plan)と呼ばれる個人の業績改善計画が存在し、ノルマを達成しなければ退職を迫られ、退職を拒否すれば降格され、実際に多くのアマゾン社員がPIPによって退職しているという。この男性は「FRIDAY」の取材に対し、ストレスから頭痛や吐き気に見舞われ、病院で適応障害と診断され精神安定剤を服用しながらPIPを続け、何度も退職勧奨を受けていたと語っている。

「外資系は人事評価の基準やプロセスが透明化されているという印象を持たれがちだが、そこは各企業のポリシーによるので、企業によってまったく異なるというのが大前提。PIPは外資系ではよく使われる手法で、社員に達成不可能な目標を課して、数時間おきに『なぜ達成できないのか』などと詰めて退職に追い込むといったケースが多い。外資系企業の日本法人や日本支社の場合、本社から『いついつまでに何人解雇しろ』と具体的な数字とともに指示が来て、マネジャーは割り振られた人数をきちんと解雇しないと自分が評価を下げられたり解雇されるので必死になる。外資では解雇=悪という風潮は希薄で、さらなる成長に向けた最適なリソースの再配置というとらえ方。また、解雇した人に会社が提訴されても、米国企業では訴訟は日常茶飯事なので、ことさらに問題だとは認識されず、粛々とマニュアルに沿って対応するだけ、となる。そのあたりは日本企業の感覚とは大きく違う」(外資系IT企業社員)

BusinessJournal編集部

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