今クールに日本テレビ系で放送中の連続テレビドラマ『ACMA:GAME アクマゲーム』の原作者がX(旧Twitter)上で、ドラマの脚本の内容について
<漫画と設定を変えてもいいんだけど、それで矛盾が発生して、その矛盾がキャラの心情すらもわからなくさせてしまっている>
<ちょっと流石に不明なこと、はっきりしないことが増えすぎて、7話は楽しめなかった…>
などと疑問を投稿し、注目されている。日本テレビでは1月、昨年10月期の連続テレビドラマ『セクシー田中さん』で、原作者・芦原妃名子さんの意向に反し何度もプロットや脚本が改変されていたとされる問題が表面化し、芦原さんが死去。同社は社内特別調査チームを設置し現在調査中だが、原作改変をめぐる問題が再発しているのではないかとの懸念も広まっている。
同ドラマは漫画『ACMA:GAME』(講談社/原作:メーブ/作画:恵広史)を原作とし、第7話(19日放送)の世帯平均視聴率は2.9%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)となっているが、原作者であるメーブ氏は第7話の放送後の21日、X上でドラマの脚本の内容について以下のように投稿している。
<一度情報をしっかり整理してほしい。漫画と設定を変えてもいいんだけど、それで矛盾が発生して、その矛盾がキャラの心情すらもわからなくさせてしまっている気がします>
<ううーん…ちょっと流石に不明なこと、はっきりしないことが増えすぎて、7話は楽しめなかった>
<優勝したらどうなるの? 逆に優勝できなかった人はどうなるの? そのあたりがはっきりしないから、どんな気持ちで勝負を見守ったらいいのかわからない>
<こんな怪しい団体のトーナメントに・・・しかも負けたら命を他人に握られてしまうのに、みんな大人しく参加しているのがわからない>
<悠季ちゃんが「50本の鍵を保管する場所があるはず」って言って探してたけど、そりゃどこかにはそういう場所があるだろうけど、この島とは限らないよね? 日本のどこかかもしれないし、そもそもトーナメントは世界中でやってるらしいし…>
さらに26日には他のXユーザーのドラマへの感想を引用するかたちで
<しっかりゲーム部分を見てくれてる人に対して、「しっかり見るとか暇かよw」って態度なんだよねこのドラマ>
と綴っている。
これらを見る限り、メーブ氏がドラマの脚本に不満を持っている部分があることや、メーブ氏の意に反するかたちで原作が改変されている可能性もうかがえる。
社内特別調査チームで調査中
日テレといえば1月、『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんの意向に反し何度もプロットや脚本が改変されていたとされる問題が表面化。芦原さんが亡くなったことを受け日テレは、
<日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております>
とのコメントを発表。原作漫画の出版元で芦原の原作代理人として日本テレビとの契約ややりとりの窓口だった小学館は2月8日、「第一コミック局編集者一同」の名義で
<ドラマ制作にあたってくださっていたスタッフの皆様には(編集部追記:芦原さんの)ご意向が伝わっていた状況は事実>
との声明を発表。また、脚本を担当する相沢友子さんは自身のInstagramアカウントで同日、
<芦原先生がブログに書かれていた経緯は、私にとっては初めて聞くことばかりで、それを読んで言葉を失いました。いったい何が事実なのか、何を信じればいいのか、どうしたらいいのか>
と投稿(後にアカウントを削除)。1月に芦原さんは自身のブログ上で、ドラマ化を承諾する条件として日本テレビとの間では<ドラマ化するなら『必ず漫画に忠実に』。漫画に忠実でない場合はしっかりと加筆修正をさせていただく>との取り決めを交わしていたと説明していたが、相沢さんはこの取り決めを知らされていなかったとみられている。
一連の事態を受け日テレは社内特別調査チームを設置し、当初は結果をゴールデンウイーク明け頃に発表するとしていたが、公表が遅れている。
原作者によるチェックがルール化
そうしたなかで投稿された、今回の『ACMA:GAME』原作者による脚本への疑問。背景に何があるのか。テレビ局関係者はいう。
「ドラマの放送がスタートした時点でまだ5話くらいまでしか脚本が完成していない場合もあれば、放送開始の数カ月前には全話分が完成している場合もあり、作品によってまちまち。『セクシー田中さん』問題以降、どこの局でも原作モノのドラマ制作の現場ではこれまで以上に原作者による事前の脚本チェックを受けることを徹底しているが、あくまで可能性の話として、『ACMA:GAME』は脚本が完成したのが『セクシー田中さん』問題が起きる前であり、かつ原作者がきちんと脚本をチェックするという流れになっていなかったということも考えられる。
10年前くらいまで、ドラマ制作では事前に脚本を原作者に見せて本人の意向に反する部分がないかどうかチェックを受けるという慣習は、ほとんどなかった。だが近年では、原作者から『事前に見せてもらう必要はない』と言われない限り、原則としては脚本を原作者に見せることがルール化されている。とはいえ、たとえ原作から設定やストーリーを変えても、原作者が脚本を読んで内容に細かくいろいろと言ってくることは稀。制作の現場はとにかく時間がなく、また一つの作品に非常に多くの人間がかかわるので、制作サイドとしてはできるだけ脚本の修正が生じない方向に持っていこうとする。
ちなみに、そうした大人の事情を俳優陣も分かっているので、アドリブが入ることは珍しくないが、俳優が脚本の内容に“ここはおかしい”などと口を挟むことはほとんどない」
別のテレビ局関係者はいう。
「メーブ氏の投稿を見る限り、同氏は事前に日テレから脚本を見せられていないように思えるが、日テレが原作代理人である出版社には事前に渡したものの、出版社が原作者に見せないままOKするケースもあるので、そのようなかたちだった可能性も考えられる。『セクシー田中さん』問題は一つの局に限った問題ではなく、業界全体に共通する問題であるというのが業界関係者の共通認識だが、日テレでは短期間のうちにたて続けに表面化しているところをみると、ちょっと多いという印象。日テレはドラマ制作部門全体の体質として根本的な問題を抱えているのではないかと感じる」
当サイトは日本テレビに対し、『ACMA:GAME』の原作者に脚本の事前チェックを受けていたのか事実確認すべく問い合わせたところ、「個別の質問にはお答えしかねます」との返答が寄せられた。
(文=Business Journal編集部)